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ーーコンコン
車を走らせる気力もなく、ただハンドルに顔を埋めて泣いていた所に、窓をノックした音が聞こえ、振り向いたら、そこには驚いた顔をした望月がいた。
まさか知り合いに会うと思わなくて、急いで涙を拭き、車から出た。
「何泣いてんの」
「なんでいるんだよ」
「いや、なんか、入江っぽい奴が車の中で倒れてると思って近づいたら入江だった」
「……」
相変わらず空気が読めないのか、空気を読みすぎてるのかわからない奴で、さっきまで泣いてたのが嘘かのように体が軽くなった気がする。
「飯食う?」
励ましてくれてるんだろうか?
そうだとしたらすっげー嫌だしイライラするんだけど…
なんだか今回だけは助けられた感じがするから…
「食う。奢れ」
「はいはい、泣き虫入江くん」
「おい」
「入江も泣けば可愛いんだな」
「やめろ、きもい」
気を使われてるのはわかってるけど、今だけ…
後で一条に恨まれると思うが、今だけこの男に甘えてみる事にする。
甘えるなんて、俺らしくないんだけどな。
歩いて近くのラーメン屋に入り、特盛の味噌ラーメンを二つ頼んだ。
改めて目の前の男を見ると…高校の時、周りから「王子様」って呼ばれてた理由がなんとなく解るかもしれない。
背は、俺より低いけど…あ、ゆうと同じくらいか…
口からはえげつねえ事ばっかり出てくるけど、見た目は凄え優しそうで、こいつ学年一頭良かった記憶が…
その王子様が実はホモだったなんて。
俺も人の事言えないけど。
「俺に惚れるなよ?俺は駿一筋だから」
「俺は男に興味ないから安心しろ」
「へぇ?堀川は別?」
「……あいつ、限定」
「ぶっは!!お前のデレは貴重だな」
「うっせ」
学生時代、俺はこいつよりも、こいつの恋人の一条とのほうが仲良かったから、なんか、こいつとこうふざけ合うのは新鮮で、落ち着く。
「入江さ、お前、最後に堀川に好きって言ったのいつ?」
突然そんな質問されて答えに困った。
好きなんて…全然言ってないな。
いつだろう。
それさえも思い出せない…
前は死ぬほど好きだったのに…
「男同士って、縛るもんがないじゃん?だからそうやって、好きとかキスとかそういうの毎日のようにしてやんないと、相手は不安になると思うよ。
お前、ノンケじゃん?だから尚更。
堀川の元彼、知ってるだろ?」
そうだった…
堀川は、ゲイだった。
あいつは、俺と付き合う前に、中学んとき?先輩と付き合ってたらしくて…
それはまあ、酷かったって聞いた。
「あいつ、なんて言われて振られたと思う?」
長く付き合ってたけど…俺は一度もゆうの元彼について聞かなかった。それは、ゆうがその、元彼の話をすると酷く傷付いた顔をするからだった…
「男より女のほうがいい…って」
「…」
それは、
俺が思った事と同じだった。
「最初は凄い大事にされてたけど、徐々に冷たくされて、最後に…そう言われたんだと」
「堀川は…なんか言わなかったのか?」
「なんか、『だったらなんで付き合ったんだ』とかそれなりの事は言ったらしいけど、『男のお前は夢見すぎ』て言われたらしい」
なんだよ…
バカじゃねえのそいつ…
ゆうに愛されて…幸せじゃねーか…
なのに…
ゆうはお前の事を愛したんだぞ…
凄え、羨ましいくらいじゃないか。
なのに、なんで手離す…
なんで、俺はゆうを手離したんだろう。
「堀川が何も言えないのって、多分お前に同じ事言われたくなかったからじゃないかな」
「堀川がね、おととい家に来たんだ」
「ゆうが!?」
「ゆうって呼んでるんじゃん。まあ、うん…アパート紹介してやったから」
「どこに?今あいつはどこにいるんだ!?」
「それは言えない。堀川と約束したから言わない。でも、そうだね…正月は実家に帰るって言ってた」
実家…
そうか。
ゆうの実家には何度か行った事がある。
あそこに行けば、ゆうと会えるかもしれない。
「入江は、どうしたいの」
俺は…
俺はゆうともう一度
「もう一度、なんて、堀川が許すと思う?」
「思わないよ。でも、俺はやっぱり堀川が凄く、死ぬほど好きだ。」
「そう…んじゃラーメン食べようか」
ちょうど頼んだラーメンがきて、会話が途切れた。
ゆう、ごめんな。
でも、諦められないんだ。
俺は、今も昔も、お前が好きだ。
今すぐ…会って…謝りたい…
入江side end
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