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救急車が来て、俺はその時初めてお袋の部屋に入った。
そこには、天井の柱から吊るされた縄に首を引っ掛けて…白目を向き、口から…何かの液体が出ている…実に酷い姿のお袋がいた。
顔も、真っ白というよりはもう紫色で、とてつもなく悲しい顔をしていた。
こういう場合、警察を呼ぶのか、医者を呼ぶのかわからない。
死人だから、医者はもう必要ないと思ったが、警察を呼ぶのも、なんか違う気がした。
「中山、透の側にいてあげてくれないかな…あいつにお袋の姿は、もう見せたくない。病院までは俺一人で行くよ。そして、今日は泊まってって、明日の朝、送るから」
「うん、わかった」
ーーーー
俺が病院から帰ってきたのは、深夜の3時頃だった。
家に入った瞬間、死体が結構長時間いたせいか、嫌な臭いが…する。
リビングにまだ明かりが付いていたから、そこへ足を運んだら、中山がまだ起きていた。
「お疲れ…透は?」
「部屋で寝てると思う」
「そっか……」
何もかも…自分が望んでないことばかり起きて、やっぱり世界は俺の敵なんだなーと他人事のように思う。
透も、俺に助けを求めるのは今だけで、あとで、目を覚まし、冷静になったら、俺のせいだって言うんだろうな。
俺が東京に戻らなかったら、お袋の側にいて面倒みてやったら、もっと励ます言葉を言えてたら……こんな事にはならなかったんだよな…
お袋が自殺した原因は、不明だ。
遺書も残さず、死んでいった。
でも、多分、父親の兄弟とかから変な事言われて…ストレスで…
そういう事なんだろう。
透も友美も、お袋を責めてたしな…
やっぱり俺のせいじゃないか。
俺はお袋の異変に気付いたはずだ。
飯も食わず、死にそうな顔で笑うのを。
『大丈夫』なんて言葉を全然大丈夫じゃない顔で言ってたのも。
「俺のせいだ…」
俺のせいだ…全部。
「入江…死にそうだよ、お前」
「いっそ、死んだほうがいいのかもな」
もう、誰も俺を待っていない。
俺を理解してくれる人も、いない。
透と友美の面倒をしないといけないのに、
それは、俺にとって辛い事になるんだろう。
俺のせいだって言われながら…あいつらの面倒を見る。
お袋が味わってた屈辱を味わうのか…
「俺は、楽になりたいよ」
「そうか…」
中山は、俺を止めないんだな…
なにを考えてるのかわからないけど、
多分俺の気持ちがわかるんじゃないかとか思ってしまう。
「俺は入江を止めないよ。友達として、君が苦しんでるのを見るのは嫌だから」
だからこれ、っと言いながら
財布から薬?を12錠くらい渡された。
「血圧降下剤。一気に飲めば、死ぬよ」
いかにも『はやく死んでください』と言われてるみたいなのに、この時の俺は、俺の死を許してくれる中山が神に見えた。
俺を救ってくれるのは、こいつだと。
こんなクソみたいな人生から、救ってくれるのは、中山だと。
「ありがとう…」
「うん。でも弟くんの前では死なないでね?なるべく誰からにも見つからない場所で」
「わかってるよ」
そして俺は、その薬を受け取り、財布の中に入れた。
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