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大声で、名前を叫ばれて、その声の先を見れば、そこには弟の透がいた。
汗だくで、見たこともない表情をしながら俺の前に立ち止まった。
全力で走ってきたのか、いつもキッチリしてる髪型も崩れてて、前髪が顔にビッシリ汗のせいでくっ付いてた。
こんな怒ってる顔をした透を見るのは…凄く久しぶりで、つい固まってしまった。
「何しようとしてんの」
そう、俺より若干高い声で言い放ち、俺の前髪を掴み上げると同時に、透と目を合わせるよう上を向かされた。
髪の毛が全部抜けそうな勢いで掴まれたのに、それでも俺に構ってくれる弟が可愛く見えて、ドMじゃないが、嬉しいと感じてしまう。
「なに、死のうとしてんの」
「バレてた?」
「っざけんなよ!!」
「っ…」
ふざけたトーンでそう茶化したら、弟のくせに俺の顔面を思い切り殴りやがった。
はっ、流石現役高校生、握力半端ねえな。
「お前、俺たちの事も考えねえのかよ」
苦しいのは俺のはずなのに、何でこいつのほうが辛そうな顔をしてんだろう…
俺が居なくなるんだ、喜ぶはずだろう…
なのに、なんでそんな…
「泣くなよ」
唇を噛み締めて、静かに涙を流していた。
透が。
手を伸ばし、涙を拭ってやろうとしたら、180はある身長の顔に座ってる自分の腕が届かなかった。
本当、大人になったな…
仕方なく立ち上がって、俯きながら泣いてる体を抱き寄せたら、しゃくり上げながら泣き出した。
「俺が高校生ん時、泣いたことなかったぞ?」
「嘘つき、大会で負けた時泣いてたじゃん」
「あ、そうだっけ?」
そうだ、と小さく呟き、俺の肩にぽつんと頭を預けた。
昔は、こいつの頭が丁度俺の胸にあったのに、今じゃ背も変わらないからなー。
抱き締めてあげたいが、流石に外で、弟って言ってもこんなでかい男と抱き合ってたら周りから冷めた目で見られるよな…こいつが。
「何しにきたの」
出来るだけ落ち着いた優しい声でそう聞くと、
「自殺キャンセル」
と怒った声で返されたからつい笑ってしまった。
「笑い事じゃないだろ」
「あはは、ごめんごめん、そうだな」
笑い事じゃないけど、
嬉しかった。
とてつもなく嬉しくて、俺も弟の前で、泣いていた。
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