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入江がコーヒーを淹れてくる間、部屋の中をウロウロしていいと言われたので、リビング、寝室、空き部屋、と色んな部屋を覗いてみた。
多分俺はここに住んでたんだろう。
人の部屋を探るような事をして気分は良くないけど、何かを見て思い出すんじゃないかと思うと、部屋に置いてある私物までつい触れてしまう。
「俺のものはもうないの?」
リビングに戻り、まだキッチンにいる入江に聴こえるようにそう聞く。
あちこち回ったけど、俺の私物はなかった。
多分自分のものなら覚えてると思うんだが、それらしき物は見当たらなかった。
ここに住んでたんだろう、俺は。
なのになにもないなんて…
「俺がいない間に堀川は引っ越したんだよ。帰ってきたらお前の部屋になんもなかったし」
「そうなんだ。ただの喧嘩じゃなかったんだな」
「うん。謝りに行ったけど、そん時もまた揉めちゃってな」
「そっか」
やっぱり、そんな単純な喧嘩じゃなかったんだな。
このままこの話をするのは、辛い。
多分入江は俺にもう一度謝りたいんだと思う。
だってまだ俺に怒ってたら、記憶ぶっ飛んだ俺にこんな構ってくれるはずないから。
でも、謝る相手は俺じゃない。
今の俺に謝っても、俺はただ首を傾げて、何も言わず許してしまうから。
だから、辛い。
こんな状態の俺は望まれてないし、早く思い出したいのに思い出せなくて…なのに、思い出さないままでもいいなんて思ってしまって…
「ま、この話はまた今度な」
はい、コーヒー、と優しい笑顔でマグカップを渡されて、俺は好きだけど、今この中途半端な関係も悪くないなと思った。
堀川side end
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