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思い出して
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ゆうは、目を覚ましても俺の事を思い出してくれなかった。
それは多分、彼自身、俺の事を忘れたいと願ったからだろう。
それか…実は記憶喪失なんて嘘で…
いや、それはないか。
もし嘘だったら、俺に『会いたい』なんて言わないしな。
俺の横にマグカップを持ちながら座るゆうを見て思う、こんな事になったの全部俺のせいなんだなと。
俺が、あんなクソみたいな事をしなければ、ゆうは中山の元にはいかない。中山とそんな関係になってなかったら…
ダメだ…
過ぎたことを悔やんでもなんにもならないんだ。
今更自分を責めたって、俺には時間を巻き戻す事なんてできないんだ…
「ちょっとタバコ吸ってくるわ」
「え、なんで?」
「なんでって…なんとなく?この時間って妙に吸いたくなるんだ」
テーブルの上に置いてあるタバコとライターを持ち、ベランダに出る。もうすぐ夏だけど、夜は肌寒いな…
いきなりの寒さにブルッとし、腕をさする。
そういえば、ベランダでタバコ吸うの久しぶりだな…
ゆうと、冷めた関係になってから、俺はベランダに出るのが面倒くさくなって、だったらゆうが寝室にでも行ってればいいとか、本当に自分勝手な事を考えてたな…
喘息持ってる人と、ただ理由もなくニコチン中毒の奴、どっちを優先するか見てわかるくらいなのに…
「最低だな…」
自分が最低すぎて、つい笑みがこぼれる。
「誰が?」
「えっ……ぐっ…ごほっ…」
独り言をぼやいてたら、背中からゆうの声がして、驚いてむせてしまった。
つか、いつからいたんだよ…
「大丈夫かよ」
「急に現れるなよ」
「客を置いて行くとか無礼者」
「だからタバコ…」
「タバコと俺、どっちが大事なんだよ」
「はぁ?」
「ふはっ」
冗談、俺も吸ってみたいな〜なんて笑いながら俺の横に並んだ。
冗談…か…
冗談なんか言い合うの、すっげえ久々。
そして、可笑しそうに笑うゆうが、月明かりなんかないけど、輝いて見える…
「綺麗だ」
第一印象が、それだった。
ガキん頃、俺はゆうに一目惚れしてたんだよな…余りにも綺麗すぎて、欲しいと思った。
「俺、それよく言われるけど嬉しくない」
「だよな…男に綺麗って微妙か」
「でも、昔、誰かに言われたような気がする…そん時はすげえ嬉しかった」
遠くを見つめてるゆうの横顔は、綺麗という次元を超えてて…
「俺はその人が好きだったんだと思う。覚えてないけど」
その言葉に胸が鳴る。それは、誰のことを言ってるんだ?それはーーー
「それは、入江だったのかな」
「橘さんじゃないの?」
「橘さんじゃないよ」
「そう…か…」
「うん」
このままでいいんだろうか?
このまま、ゆうに俺の事を思い出してもらおうと頑張ってもいいのだろうか?
ゆうは、このまま俺の事を忘れた方が幸せなんじゃないのか?
そうかもしれない…
俺なんか忘れた方がいいかもしれない。
でも、
俺は自分勝手な人間なんだ。
だから、俺は…
「堀川…京都に行かないか?」
俺は、絶対にゆうに、自分の事を思い出させてやる。
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