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土曜日、昼までの仕事から帰ってきた時、橘さんはいなかった。
出掛けるの夕方だけど、早めにシャワー浴びて待ってる事にした。
けど、それを何も考えずに出来るわけもなくて…
朝から智也のメールが届いていた。
今日はホテルで食事を取ってあるからスーツを着て来てって。
7時に迎えに行くからって。
何度も何度も確認を取るようにメールが来ては俺は本能と戦い合っていた。
うん、スーツ、凄く俺にぴったりだったよ。
オーダーメイドって高いんじゃないの?
俺が貰っていいの?
嬉しい。後で着ていくね。
誕生日おめでとう。
でもそれすら言えないくらい、自分は臆病なんだ。
彼が言うように今度こそは本気なんだと思う。
でもだからってそれが一生続くかどうかはわからないじゃん。
今だけかもしれない。
俺が居なくなって慣れないからかもしれない。
ただの気紛れかもしれない。
わからないじゃないか、他人が何を想っているかなんて。
だって俺はとっくに信じてたから。
あの日、俺が軽い記憶喪失にあった頃だって、今思えば何も知らないままアイツを信じていた。
でも…
アイツは俺じゃない誰かといたんだ。
浮気かどうかわからない。
でもアイツはいつも俺を不安にする。
だから、信じたいけど、信じない。
午後5時頃に橘さんはカジュアルな服装で帰ってきた。
「なに、デートでも行ってたの?」
「デートは堀川とするんじゃん」
「デートなら行かないけど」
「デートじゃありません」
そして、俺が智也と会わない理由をこれにする。
橘さんと出掛けるから。
橘さんと先に約束をしたから…
「入江んとこに本当に行かなくていいのか?」
「うん、行かないよ。俺、橘さんと約束したし」
「もし、俺と約束してなかったら行くの?」
「え?」
橘さんのその声が悲しそうなのは何で…なんだろう。
別にただ意地で橘さんと出掛けるんじゃないのに…
本当に、一緒に出掛けたいとは思ってるよ。
でもそう伝えると橘さんは眉を下げて
「そっか」
と笑う。
「んじゃ早く着替えて、俺、友達に車借りたから」
「え、マジ?」
「マジ」
「あんた運転できんの?」
「あたりめーだ」
「ほぉ」
この時は、ほんの少しだけ楽しいと感じたんだ。
メールや電話を無視して、ただひたすら橘さんと楽しもう。そう思っていたんだ。
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