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しかし、想像していたような痛みは、無かった。
それどころか、神田の手は優しく、優しく御崎の頭を、撫でたのだ。
(・・・え・・・?)
脱色と染色を繰り返して、ボロボロに傷んだ髪を労わるような手付きで、柔らかく往復するその暖かな感触に、御崎は目を開けた。
「・・・少し、意地悪が過ぎたな。大丈夫か?」
その声は、いつもの抑揚の無い声とは少しだけ違っているような気がした。気がした、と言うのは、具体的にどう違っているのかが、御崎にはわからなかったからだ。
しかし、その言葉に違いを表せないくらいの微弱な変化を、御崎は全身で感じていた。
「お、こって・・・ないんですか・・・?」
「怒ってないよ」
「す、少しも?」
「少しも、ほんの1ミリだって、怒ってないよ」
神田の細く滑らかな手が、御崎の頭を撫でる度に、御崎の肉体から力が抜けていく。
それはまるで、全身の筋肉を溶かしていく優しい魔法にかかっているようだった。
「・・・ぁ・・・」
御崎の腕を掴んでいた手が離れたかと思うと、神田は御崎の身体をゆっくりと力加減を測り包むように、両腕で抱き締めた。
「風呂、行こうか?」
壊れかけた肉体を包む暖かな感触に、御崎は小さく頷いた。
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