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(さすがに本人の目の前でにおいを嗅ぐのは、非常識か)
少しサイズの大きめなカーディガンは、着てみると袖がかなり余ってしまう。
指先が顔を出す程度にしか露出しない両手の袖を胸のあたりに晒して何気なく眺めていると、不意にその両首を神田が掴んだ。
「えっ、なに」
ニット越しに感じる手の力とぬくもりに、つい心臓が跳ねてしまう。
戸惑い、顔を上げて神田の目を見ると、神田は御崎と目が合った途端に、フッと口角を上げて笑って見せた。
その何気ない笑顔にさえ、血液が滾って心臓を踊らせる。
「ほら。これ」
神田が掴んだままの御崎の手首をクイッと軽く御崎の口元にまで持ち上げる。御崎は戸惑ったが、不意な行動が理解出来ず、無抵抗に弄ばれる事を良しとした。
そんな御崎に、神田は上機嫌に口を開く。
「萌え袖。かーわーいーいー」
「・・・・・・」
何を言い出すかと思えば、予想の斜め上を行くくだらない発言に、御崎は眉を寄せて神田を睨んだ。純粋に腹が立つ。
くだらない事を言っているくせに声がいつも通り平坦な所がさらに腹が立つ。
「そんなドン引きした目で見るな」
「引きますよ。引きまくりですよ。先生が『萌え』なんて知ってる事にもドン引きですよ」
「『萌え〜』くらいは知っているさ、一般教養の範囲内だ。あと、あれだ、俺みたいな人間のことは『ツンデレ』って言うんだろう?」
「違います。先生はそんな可愛いもんじゃないし、絶対意味を履き違えてますよ、それ。・・・先生は控えめに言って『人でなし』です」
「ふははっ。酷い話だな」
(・・・それでも否定しないあたりは、自覚はあるんだろうなぁ・・・)
御崎から手を離し、軽く笑う神田を睨みながら、御崎は萌え袖と指摘された袖を肘の下にまで捲りあげる。
当てつけの意味と、単純に邪魔だからだ。
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