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好きになった理由【大野の場合】1
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(大野語り)
行き場の無い想いを抱いて寝ていたら、なごみさん家に変わった人が来た。渉君と呼ばれたその人は、中性的でなごみさんに雰囲気は似ているが、根本的に違った。淡いグリーンのカーディガンが似合っていて、物腰は柔らかだった。
だけど、あからさまに俺に敵意を向けている。
この人も、なごみさんが好きなんだと、すぐに分かった。なごみさんに対する仕草が優しいし、目線が常に彼を追っている。
俺、この人とライバルで勝てるのかな……
それに、なごみさんを良く知っているようで、2人には独特の空気感と会話のテンポがあった。現在の時点で恋愛対象にすら見られてない俺は、この人と争う資格すらないと、愕然とした。
昨日、力ずくでモノにしとけばよかった……とすら思う。その場の欲望は満足しても、嫌われて話してくれなくなるだろうが、出来るだけの勢いだけはあった。
だが、行動に移せるだけの勇気がない。
そもそも男同士のやり方もわからない。
なごみさんのことを何にも知らない俺は本当に格好が悪いと思った。
なごみさん、渉さんと3人でテーブルを囲んだ。
コーヒーが二日酔いと疲れた体にしみるようで、無言で飲み干す。俺はなごみさんの綺麗な指を見ながら、初めて会った日のことを思い出していた。
初めて会ったのは、入社してすぐ、パソコン研修を受ける時だった。新人教育を行う課長と一緒に補助として俺たちに教えてくれたのが、なごみさんだった。
第一印象は、うーん、ちょっと頼りなさそうな色白の人……かな。線が細く、ひ弱そうに見えた。言葉にすると余計に魅力的ではない気がするが、当時は全く気にもしていない存在だった。
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