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なごみと過去11
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(なごみ語り)
雪の日から2週間後の火曜日に僕は駅前で諒と待ち合わせをした。
諒に写真を撮らせて欲しいと言われ、気の迷いかもしれないから連絡が無ければ忘れようと決めていた。期待するとダメになった時の心傷が半端ない。僕は無理に期待しないよう気持ちにブレーキをかけていた。そして、この癖は社会人になった今も抜けない。
僕の予想に反して諒からはその日の夜にメールが来る。思わず携帯を持つ手が震えた。
気の迷いじゃなかったんだと、嬉しくて少し泣いた。
待ち合わせ時間から15分も前に来た僕は、緊張でガチガチだった。変に意識するから駄目なんだ。ただの友達と思えばいいと、立ったまま固まっていた。
「り、諒さん、よろしくお願いします。」
「おはよう。お願いしますはこっちの方だよ。今日は最初だから、話しながら撮っていいかな。公園を歩こうか。普通にしてくれれば、こっちが勝手に撮るんで気にしないで。」
僕は全く写真の知識が無く、写真はスタジオで撮るものだと思っていて、諒が提案したものは想像と全く違った。自然の僕が撮りたいからと諒は言う。
「カメラは気にせず、俺と普通に散歩していると思えばいいよ。」
「はあ……分かりました。僕にできるかな。」
気にしないなんて、絶対無理だ。今だって意識しまくりだし。
「大丈夫だって。さ、行こう。」
「は、はい。」
僕は広く大きな背中を追いかける。
諒は、いつもの大きなカバンではなく、首に一眼レフのカメラをぶら下げた軽装だった。
冬の割にはポカポカ陽気で、日差しが気持ちいい。もうすぐそこに春は来ていた。諒にカメラのファインダー越しから見つめられて、恥ずかしくなる。けれども、なんだかくすぐったくて心地がよかった。
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