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なごみと過去12
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(なごみ語り)
諒とは2週間に1回ほど写真を撮るために会った。最初は緊張していたけど、3回目ぐらいからはリラックスすることができた。
行き先も公園から水族館、ショッピングモールや動物園などで、今思うとデートコースそのものだった。
まさか諒の気持ちが僕に傾いているとは1ミリも思っておらず、僕の中で2人は全く違う世界に住んでいて、たまたま写真で関わっているという感じだった。
そうしないと諒への想いが溢れて自分が苦しくなってしまう。意識しなくても、彼への想いは溢れんばかりに育っていた。
春になって諒は大学を卒業し、僕も就職活動が佳境に入ってきた。そのため、写真を撮るための時間が作れなくなってくる。これ以上、写真を撮ってもらうことができなかった。僕の都合で諒の大切な時間を振り回すことに忍びなかったからだ。
諒にそれを伝えると、残念そうな表情で笑った。
「しょうがないね。次で最後にしよう。なごみ君の行きたいところへ行こうか。」
行きたいところか……次で諒と2人で出掛けるのが最後になるのかと、寂しい気持ちに切なくなった。
「あの…………」
「決まった?映画館、それとも美術館とか?」
「…………諒さんの部屋に飾ってある明け方の空が見たいです。」
ダメ元で僕が言うと、諒が驚いた顔をした。
「えっ、あの空?」
「あのっ、難しそうならいいですから。好奇心で見てみたかっただけなので。すみません。」
「……うん。ちょっと待って……」
諒が考え込んだので、僕は激しく後悔していた。面倒くさいことを言ってしまったのかもしれない。
「あの写真は、俺の実家近くで撮ったんだ。うちはすごく田舎で何もないけど、なごみ君がよければ連れてくよ。顔を見せに帰って来いって親もうるさいし、ちょうどいいや。」
「いいんですか……?」
「あぁ。行こう。なごみ君にもあの景色を見てもらいたい。」
なんと最後のデートは、諒の実家へ行くことになった。デートというよりは旅行で、全くの予想外だった。まさかの逆転ホームランだ。
最後だから、神様がご褒美をくれたのかもしれない。
今でもあの頃を思い出すたび、甘酸っぱい想いが胸に広がる。
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