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恋人と友人の境目8
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(渉語り)
「榊さん、やっぱり僕って魅力ない?報われない恋をして、相手に尽くして、虚しい奴に見えたりする?」
半分絡んで、半分本音だった。
決して最初は見返りを求めて始めたわけではない。
諒君と別れてボロボロの洋ちゃんを見ていられなくて、純粋に助けたかった。
僕は随分前から洋ちゃんに好意を持っていたし、いつか振り向いてくれたらいいなと軽い気持ちで始めたことだ。それが、洋ちゃんに後戻り出来ないところまで惹かれていき、彼の見返りが欲しくなっていた。
欲しいものが大きすぎて僕には手が届かないのは分かっている。
報われない自分が惨めで、いっそのこと洋ちゃんの前から消えたいけどそれができない。
離れたらもっと辛くなる。
身を引き裂くような切なさに耐える自信は無く、洋ちゃんに会えなくなって、身体に触れることができなくなるのはもっと嫌だった。
涙がぽろぽろこぼれる。
僕は榊さんの前で声を出して泣いた。
カウンターの向こうでたぶん洋ちゃんも見てるが、訳が分からなくなっていた。
どうしたらいいのか分からない。
こんなに酔ったのも初めてで、収拾の付け方も不明だ。
「渉……そんなに辛いなら、少し休んだらいい。おじさんで良ければ、いつでも抱くよ。」
榊さんがおじさん……5年は短いようで長い。
「ぐすん………榊さん、そういうのはいらない。」
まともに受けて一緒に悲しんでくれるより、榊さんの中途半端なふざけ具合が今の僕にはありがたかった。
「さっき言ったことは本当だよ。俺だって渉とやり直したいと思ってる。報われないを恋をしているのは君だけではないからね。世の中にごまんといるよ。それに恋は悲劇だけではないだろう。」
榊さんが優しく僕の肩を抱き、囁いた。
「じゃあさ、今から洋一君と2人にしてやるから告白してこい。自分の気持ちをしっかり伝えろ。すっきりするだろ。」
「えっ、無理無理。心の準備ができてないって。」
「どうせ近いうちに言うつもりだったんだろう。今からでも変わらないから。駄目だったら、この後俺とホテルへ行こう。とろっとろに慰めてやるよ。」
振られる前提で話してくるので、少し腹が立った。
「うまくいったら、どうすんの。」
「うーん、祝福するよ。ぶっちゃけ、うまくいくと思ってるの?」
「………むかつくけど、絶対にうまくいかないと思う。」
「はい、じゃあ、洋一君にフラれておいで。そして、俺に戻ってこい。失恋した傷を癒してやるよ。頑張れ渉。おーい、洋一君、渉が話したいことがあるってさ。」
榊さんの思いつきのような発言で、僕は洋ちゃんに想いを伝えることとなった。
どうせ砕けるなら早いうちがいいかな、と酔った勢いで自暴自棄になっていた。
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