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真夜中の片思い6
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(大野語り)
終電で酔っ払いに囲まれて、なごみさんと並んで座席に座っていた。電車内は酒とタバコと何とも言えない疲れた人達の匂いがする。
俺が契約書を失くして途方に暮れていた時、階下へ降りたのはなごみさんの顔が見たかったからだ。
縋るような思いでゴミ箱を漁りながら彼を待っていた。
姿を見て心底安心した。
あぁ、俺はこの人が好きだ。
手を伸ばせば近い距離になごみさんを感じることが嬉しくて、契約書を無くしたことさえも仲良くなるきっかけになればと嬉しく思ったくらいだ。
だけど、電車内で隣に座っているのに何も話せない。
俺は片思いをあまりしたことがない。
気付いたら女の子が寄ってくるから、あいてに不自由したことが無かった。
自分からアクションを起こして相手の印象に残るようなやり方が分からない。
恋愛偏差値の低さに今更ながら後悔する。
もっと自ら色々やっておけばスマートになごみさんと話せただろうに。
「大野君はここに座ってたんだね。」
誰もいない最寄駅を出たところで、深夜1時近くに俺たちはベンチへ座っていた。
自販機の明かりが煌々と主張して寂しさを誘う。
「はい。しばらく座ってました。」
2月の深夜は刺すように冷たく、寒さに思わず首をすくめた。 なごみさんが風邪をひかないか心配になった。
「さむー。じゃ、探そうか。早く家に帰りたいし。ほら、息が真っ白。」
はあーっと息が形になって、ふんわり漂う。
なごみさんの白い息は、夜空に消えていった。
その息、吸いたいから俺にかけてくれないかな……とか思ってしまった俺は変態だよな……
ああ、自己嫌悪。
契約書を探さないと確実にクビになると、気合を入れ直し、狭い駅裏で二手に別れて探した。
15分程経って、なごみさんが声を上げた。
「大野君、あそこにあるのは何だろう?水色の髪と、短いスカートが見える気がする。」
俺が座っていたベンチの下奥の方に、確かにそれらしきファイルが光って見えた。
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