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善くんと誠くんのお話1
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(1年生の冬から2学期末考査の後まで)
清水善×坂本誠
―誠―
今年初めて冬型の気圧配置になった。部屋の畳は氷のように冷たい。ストーブを点けてからまた布団の中に戻る。障子の外がやたらと明るくて、夜の内に雪が降ったんだとわかった。
部屋が温まるまでうだうだして、意を決して布団から出る。
洗面と着替えを済ませると、母さんの仏壇に手を合わせてから玄関の扉を開けた。
まだ雪はうっすらとしか積もっていない。革靴でいいかと思いながらも後悔するのは嫌だから、黒のゴム長靴を履くことにした。
家から駅まで徒歩で5分だから出来ることだけど、いつも駅に着くのは電車が到着する間際だ。
***
駅に着くとホームの端にはすでにダチが居た。
金髪のライオンみたいな髪型のやつに声をかける。
「中尾おはよ~」
「はよ、近いからっていつも来んの遅過ぎなんですけどー」
「早く来ても意味ねぇもん。どうせお前スマホでゲームしてるだけだし」
中尾はここの駅までバスで来ているから、待ち時間が結構あるらしい。この辺りはバスの本数が異様に少ないから仕方ないけど大変そうだ。
見た目はチャラチャラしたやつだけど、高校でできたダチの中では一番仲が良い……はず。
俺はそう思ってるけど、中尾がどう思ってるかは知らない。
俺らの通う三和高校は、この辺りでは偏差値が一番低い学校だ。
改造制服の着用、髪の染色、飲酒喫煙、不純すぎる異性交遊、警察の厄介にならない程度の軽犯罪なんかは残念ながら当たり前。
服装が派手だからといって先輩から呼び出されることはないけど、舐めた態度を取ればシメられる。
本当は真面目な人もいるものの、派手なやつらのほうが目立つから、周りからヤンキー校と言われても仕方がない。
でも他にも、三和とは比べ物にならないほど荒れている私立の学校もあるにはある。
都会と違ってここら辺は公立より私立のほうが荒れていて、人気もない。三和に入れなかった人や、退学になった人も入れるという噂だ。
だから、三和はヤンキー校とはいえ、最低最悪の学校ではない。
つーか、そんな荒れてるような学校だったらさすがに進学先には選ばないっての。いくらなんでも。
“間もなく電車が参ります。危ないので白線の内側まで下がってお待ち下さい”
学生で溢れるホームに、聞き慣れた駅のアナウンスが流れた。
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