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残業
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「あー……帰りたい」
夏真っ盛りの7月のうだるような暑さのある日。一人の男がパソコンの光しかない薄暗くサウナのように蒸し暑いオフィスに居た。
男は、よれたワイシャツを着て、額に汗を滲ませ、半分くらいまで吸った煙草を加えながら、キーボードを部屋中に響くくらいの音と強さで打ち込んでいた。
その男の名前は【櫻木 和樹】営業部の社員で、たった入社二年目でエースと呼ばれるくらい仕事が出来る男と言われている男。
期待のエースの筈なのだが、今のやさぐれた風貌を見ては誰もエースだと思わないだろう。
そんな、櫻木は殺風景なデスクに置かれている灰皿に煙草を雑に押しつけると少しぬるくなったコーヒーを飲み干した。
櫻木は、飲み終わったコーヒー缶を足元のゴミ箱に投げ入れると、煙草を口に加え吹かし、今日中に終わらせなければならない仕事を片付ける為にキーボードを打ちつける。
「今日中にこの量とか大体無茶なんだよ。なんで仕事する奴の事考えないかな」
櫻木は、普段人前では言わない愚痴をこぼしながら、資料を片手でパラパラと捲って煙草を吹かした。
愚痴をこぼしながらも、流石エースと呼ばれているだけはあるのか着々と仕事をこなしていく。
「……粗方終わった」
暫くしてロボットのようにパソコンに向かっていた櫻木だったが、粗方仕事が片付き仕事の手を休めた時にはもう23時を過ぎていた。
「嘘だろ……勘弁してくれよ。仕事終わらなくて終電逃して此所に泊まるとか死んでもごめんだからな」
櫻木は、椅子にもたれ掛かりながら顔に手を当て深いため息を吐くと 、顔から手を離し自分の頬を叩くとパソコンに向かいキーボードをカタカタと打ち込み始めた 。
あれから二十分経った頃、カタカタと響き渡っていたキーボードのタイピング音が止み代わりに櫻木の安堵した声が響いた。
「終わった……」
なんとか終電に間に合うように仕事を終わらせる事が出来て、どっと疲れが襲ってきたのか櫻木はデスクに突っ伏した。
暫く、櫻木はデスクに突っ伏したままピクリとも動かなかったが、急にむくりと起き上がり、よれたワイシャツを直し、パソコンの電源を落とし、デスクの下に置いてあったビジネスバッグに手を伸ばした。
「……疲れた。家に帰ったら寝たい」
櫻木は、気だるげに髪をくしゃくしゃと掻き回しながら立ち上がると、鍵をくるくると回しながら、オフィスの電気を消し警備室に鍵を返しに行った。
鍵を返して会社から出ると、外はなんとも言えないような蒸し暑さに包まれていた。
「夏とは言え、少しぐらい涼しくなってもいいだろ……」
櫻木は、余程疲れたのかダルそうに愚痴をこぼしつつ歩き出した。
都心部だからなのか、終電前だというのに会社員や着飾った女性などがチラホラ居て、複雑な気分になりながら最寄りの駅まで一直線に歩いていった。
櫻木が、丁度駅に入ると終電が来ているのが見えてホームに駆け込むと電車に飛び乗った。
櫻木は、とりあえず終電に間に合った事に安堵した表情をしながら、ガランとしている車内の椅子に腰掛け、携帯を取り出すと流行りのゲームを起動させる。
自宅までの帰りの電車で、流行りのゲームをする事が櫻木の日課らしい。相当、やり込んでいるのかパーティーに居るのは強いキャラクターばかりだった。
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