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じゅうよん。
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*
どうしたものかと、兎代は彼のいなくなった扉を見つめ策を考える。
そしてしばらくすると、
伊月はリビングに戻ってきた。
「お待たせしました。
部屋は1番右奥にあるので、そちらに荷物を運んでください。」
「分かりました。ありがとうございます。」
そう言うと春真はスッとお辞儀をして、部屋に荷物を運びに行った。
「……………。」
春真がいなくなった後、寧々は真剣な顔で兎代に話し掛ける。
「……兎代さん。」
「?」
「……その……、話したいことがあるんだけど。」
伊月は素早くその雰囲気を察知した。
静かにリビングのドアを開け、ソッと部屋から出る。
ーーパタンと扉が閉まる小さな音。
突然広いリビングは、2人だけの空間となった。
「なんだよ、話って……。」
「……貴方のお父様……、龍彦さんのこと。あの人は全然悪く無いから。」
「…………。」
寧々が切り出した話は、龍彦のこと。
気まずそうに手を見つめながら、彼女はちょこちょこと話し始める。
「あの人はただ、同じ境遇の人間を貴方に会わせたかっただけなの。
もし親交が深くなれば、何かあった時とても大きな力になると思うから。」
寧々はそう言うと、不満気に眉を寄せた。
「……その龍彦さんの優しさを、私は利用した。」
その声色は、まるで自らを戒めているようだった。
「だからこうなってしまったのは全て私の我儘(せい)。
……今更かもしれないけど、貴方を変なことに巻き込んでしまって本当にごめんなさい。」
寧々は頭を下げ、深々と兎代に謝った。
その表情は悲痛で歪んでいる。
「……………。」
それを見て、兎代は顔を逸らした。
「………別に父さんのことは気にしてねぇよ。
既に巻き込まれてる事だし、今さら謝られたって何も思わない。」
「…………。」
「……でも、お前の気持ちは痛いほど分かるよ。」
「え……?」
顔を上げた寧々に、
兎代は面倒くさそうに頭を掻いた。
「……その、好きな奴に見向きもしてもらえない気持ち……とか……さ。」
「!!」
その辿々しい言葉に、寧々は大きく目を見開く。
「だから手伝ってやるよ。
要はあいつに嫉妬させて、お前に関心を持ってもらえればいいんだろ?
1週間で出来るか分かんねぇけど、頑張ってみようぜ。」
兎代がそう言うと、寧々は半端信じられないという気持ちで訊ねた。
「ほ……本当にいいの?」
「なんだよ、元々はお前が無理矢理巻き込んだことだろ。俺が協力してやるって言ってんだから素直に受け止めておけよ。
それとも何、やっぱり気が変わった?」
その言葉に寧々は顔をブンブンと横に振った。
その顔はみるみる嬉しそうな顔に変化していく。
「……うっ、ううん!そんなことないよ!ありがとう!」
彼女の綻んだ笑顔を見て、兎代も笑みを返す。
一方リビング裏の廊下では、伊月が密かに話を聞いていた。
暗がりの廊下からリビングの光が差し込む。
そして2人の話を聞き終わった後、伊月は静かに息を吐いた。
壁に背を預け、安心したように目を閉じる。
そんな彼の口元には、僅かな笑みが浮かんでいた。
ーーーーーー
ーーー
「そういや、明日から俺たちの学校に来るって言ったけど。実際お前らっていくつなの?」
夕食の時。
ご飯を食べながら、兎代は2人に質問した。
「そういえば言ってなかったね。私は兎代さんと同じ17歳。春真は私達の1つ上で18だよ。」
「ふぅん。」
寧々の答えを聞いて納得する。
彼女は見た目こそ幼いが、意外に話してみると同い年って感じがした。
だがしかし、春真が18なのはさすがに驚く。
兎代の予想では20歳過ぎている思っていたから。
「じゃあ熱月さんは、伊月と同じ感じになるのか。」
その言葉に春真はピタッと箸を止める。
静かに箸を置き、彼女は兎代を見つめた。
「……兎代様。」
「ん?」
「私に"さん"付けはいりません。あと敬語も使わなくて結構です。」
「え?いいの?」
そう言うと春真は頷き、至極当然という顔で答える。
「はい。兎代様は寧々様と同じ、身分が高いお方なので。」
「……………。」
そう言うと彼女の隣にいた寧々は、悲しそうに目を伏せた。
そんな寧々をチラ見して、兎代は気まずそうに言葉を返す。
「……じゃあ遠慮なく、そうさせてもらおうかな……。」
兎代は段々、理解してきた。
寧々の言う"関心がない"という言葉に……。
(これは、俺の時よりひどいかもしんねぇな……。)
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