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にじゅうなな。
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*
無防備な状態になった春真を見て、男は優越感に浸りながら口角を上げる。
「さぁて、どうしますかね……。」
「……………。」
睨み合う2人。
その様子を寧々は奥の方で見ていた。
「春真……何で………。」
声が思わず出てしまう。
寧々は、また自分の家のためなのかと思った。
彼女は私という存在のためではなく、掛川家のためにここに居るのだと。
「春真……。いいよそんな事しなくて……。
私の家なんかのために、自分の身を危険に晒さなくていいよ!!」
「違うっ!!」
春真の叫ぶ声に、寧々は怯む。
「私は…、貴女を助けるためにここに来たんです!」
「!!」
「掛川家や十二支なんて関係ない!
私がお守りしたい方はこの世でただ1人…。掛川寧々、貴女だけだ!!」
その言葉に、寧々は驚いて息が詰まった。
嘘偽りのない顔で、真っ直ぐ見つめる春真。
その澄んだ赤紫色の瞳は決して冷たくなく、強い意志の炎で揺れている。
「おー、ずいぶんお熱い言葉を吐かれますねぇ。
でも貴女1人でこの人数…勝てますか?」
大人数でニタニタと笑う男達に、
春真は極めて冷静にこう言った。
「……誰が1人だと言った?」
「!?」
すると突然、廃墟から風が巻き起こる。
男が気づいて上を向けば、夜空が見える天井からヘリの音が。
「おいっ!!掛川は無事か!!」
ヘリの方から兎代の叫ぶ声が聞こえる。
寧々は目を見開かせて上を向いた。
そこにはヘリの入り口から自分たちを見下ろす、兎代の姿が。
「えっ、兎代さん!?」
ヘリからのライトに、男達は眩しくて目を細めた。
男は寧々の言葉に疑問を抱く。
「兎代……?」
「待ってろよ!今、そこに伊月行かせるから!!」
その言葉に、周りの男達がザワッと騒ぎ出した。
"伊月"という言葉は、この業界で知らぬ者はいない。
さすがの男も、冷や汗をかいて動揺した。
「……おいおい、それってまさかあの"伊月 楓"じゃねぇよな……。」
(もしそうだったら…やばいぞ。)
心の中で男は目一杯に叫ぶ。
あの"化け物"がここに来たらーーーー!!
ーーーーー
ーー
シュルッ
ヘリの中で黒いネクタイを締める音。
真っ黒のスーツに身をまとい、
無造作な金の髪はキッチリとサイドに流した。
そして最後に、目印である黒の皮手袋。
「では若様。行ってきます。」
「おう、アイツらボッコボコにしてこいよ。」
伊月は男くさい笑みを浮かべた後、兎代と拳を合わせた。
彼は外の世界が見える扉に手を添える。
ヘリの操縦者が伊月にこう言った。
「伊月様、どうやらヘリが近づけるのはここまでの様です。」
「十分だよ。
ここからなら縄無しでも行けそうだ。」
見下ろす先に見える獲物に、伊月は目を細める。
背後から放つオーラがどんどん鋭くなっていった。
ーーーそれは伊月が楓に戻る合図。
そして彼は外の世界へと飛び出し、天井が空いた廃墟へと舞い降りた。
ダンッッーーー!!
とても大きな地面の音。
それは広い空間に重く響く。
「………………。」
周りにいる男達は一斉に息を飲んだ。
金髪の髪、黒のスーツに皮手袋……。
(間違いない、コイツはーーーー。)
ゴクリと、誰かが唾を飲み込んだ。
飛び降りた体勢の楓は、ゆっくりとその身を崩し立ち上がっていく。
「っ、」
その姿を見た男達や犬は皆、彼の威圧感のあるオーラに怯えた。
ニコッと、楓は目が笑ってない顔でこう言う。
「こんばんは。」
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