アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
さんじゅう。
-
*
( ( (え………?) ) )
ポカンと、兎代と伊月以外の全員が固まる。
伊月はそれを聞いて、(そういえば俺、若様に話してなかったな。)なんて思っていた。
「ま、……まままさか兎代さん。月華(げっか)を知らんとっ!?」
動揺で変な訛り口調になっている寧々に、兎代は「うん。」と言って頷く。
寧々はへなへなになりながら、春真のベッドに寄りかかった。
「……兎代さん、甘やかされとる……。完全に甘々の甘ちゃんなのね……。」
「あ?」
全然分かっていない彼を星野は頼りない笑顔で笑っていた。
寧々は表情を一変させると、凄むように兎代へ近づいていく。
「いい!?この日本には、戦いに特化した有名な家系があるんよ!
その家系は決して1つに在らず!
全国で数えると全部で12あるのね!」
「うぉっ!?」
グイッと顔を寄せてきた寧々に、兎代は反動で顔を引いた。
「その家系は通称"十二ノ月(じゅうにのつき)"と呼ばれていて、裏の社会では恐れられてきたの!」
「……顔、顔近いって!!」
「彼らの家系にはそれぞれ、苗字の後ろに必ず"月"が付く!
噂かもしれんけど、100人に1人と言われる逸材が十二ノ月では普通に生まれるんよ!?」
「それは、すげえな……。」
兎代が疲れながらそう言うと、寧々はキラキラした目で彼を見つめた。
「そうなの!だから月華は十二ノ家系から選ばれたエリート中のエリートなのね!」
「ふぅん……。」
「そしてここにいる伊月さんと春真が、そのスペシャリストである月華の1人なのよ!!」
バンッと寧々は自慢するように手を広げて、伊月と春真を指した。
2人は自慢するような素振りはなく、至って真顔。
「彼らはそれぞれ、陰暦を使った称号が与えられていてーーーー」
寧々は指を1つずつ折りながら、その名を口にした。
「睦月(むつき)、如月(きさらぎ)、弥生(やよい)、
卯月(うづき)、皐月(さつき)、水無月(みなづき)、
文月(ふみづき)、葉月(はづき)、長月(ちょうげつ)、
神無月(みなづき)、霜月(しもつき)、師走(しわす)
全部で12の称号があるんよ。」
そう言った後寧々は伊月、春真の順に視線を向ける。
「伊月さんの称号は2月の如月(きさらぎ)。そして春真は11月の霜月(しもつき)という称号があるのね。」
「……………。」
「そして重要なのは、私たち十二支と月華は強い絆に結ばれているということ!
兎代さんとだったら伊月さん、私だったら春真!」
「!!」
兎代は思わず、伊月を見てしまった。
「それぞれ十二支によって、結ばれる月華は決まっているの。それを皆、縁(えにし)と呼ぶのよ。」
寧々は微笑むと、窓から柔らかい風が吹く。
「えに、し……。」
伊月も兎代を見ると、微かに笑った。
近くで見ていた星野もその2人を幸せそうに見つめている。
「ま、説明はそんな感じ!
どう?少しは私達のことわかってくれた?」
寧々がニコニコしながら兎代を見ると、彼は頷いた。
「うん…まぁ、大体な。」
それを聞いて、彼女はパチンと両手を合わせる。
「よし、じゃあこの話は終わり!
はぁぁぁ、一気に話したから疲れたよーー。」
へにゃり、と寧々が春真のベッドに抱きついた。
それを春真は優しく笑いながら、彼女の頭をそっと撫でる。
伊月はそれを見て、星野に問いかけた。
「で、星野。他に俺たちに伝えたい要件とかあるの?」
「いいえ、今のところお伝えできるのはこの位です。」
「そう、若様。」
「あ?」
伊月に呼ばれて兎代は反応する。
「少し…外に出ましょうか。」
そう言って、彼は寧々と春真に視線を向けた。
その視線に気づいた兎代は素直に頷く。
「…あぁ、そうだな。」
「掛川。」と兎代は寧々を呼んだ。
「俺たち、今からちょっと外に出てくるわ。
帰る時になったら、俺たちに連絡してくれ。」
それに寧々はコクッと頷いて、力が抜けた笑みを送る。
「わかった。ありがとう。」
兎代達は静かに、病室の扉を閉めた。
廊下を歩きながら、兎代は久しぶりに会った星野に声を掛ける。
「星野。お前、怪我はもう治ったのか?」
「はい、お陰様で良くなりました。
あの時はご迷惑をおかけしてしまい、申し訳有りませんでした。」
ペコリと星野は謝罪のお辞儀をした。
兎代は慌てて星野を元に戻そうとする。
「いやいや、お前は全然悪くないって。悪いのは俺と……」
ジロリ、と隣にいる伊月に視線を送った。
「手加減できずに本気で怒った、誰かさんのせいだから。」
「……………。」
兎代の視線に、伊月はツンと顔を背ける。
「おい、何か言えよ。……っていうか、あの後お前星野に謝ったのかよ。」
「謝りましたよー。もう終わったことじゃないですか。過去を掘り起こすなんて、若様は女々しいですね。」
「あぁ!?なんだとてめぇ…!」
バチバチと、
その時だけ2人に険悪な雰囲気が流れた。
「あはは……。」
その様子に星野も苦笑い。
病院を出ると、星野は頭を下げて兎代達に別れの挨拶をした。
「では、俺は今から他の仕事があるのでお先に失礼します。」
「うん。」
「おう。またな、星野。」
兎代達は星野と別れた後、病院の近くにあるカフェで時間を潰す。
「……あいつら、大丈夫かなぁ。」
兎代が呟くと、伊月はコーヒーを飲みながら笑った。
「大丈夫ですよ、きっと。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
97 / 148