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君に出会う
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「じゃあさ、どこ行きたい? 剣咲君の行きたい所でいいよ!」
卓斗を誘ってきたのは声優の桂木悠(かつらぎ ゆう)だった。
彼はまさに大人の男といった感じで、その整った顔に優しそうな暖かい笑みを浮かべ、卓斗を見つめる。
「え? 僕の行きたい所…ですか?」
「うん」
嬉しそうに微笑む悠を見ながら、卓斗は頭を悩ませた。
自分の行きたい所と言われても、卓斗はこれといって思いつかないのだ。
だが、先輩である悠がせっかく言ってくれたのだから、卓斗は必死になって思いつく限りの店を頭に思い浮かべた。
(…ダメだ。僕の知ってる店なんて桂木さんみたいな凄い人と行けるわけがない!)
でも、どれもピンとこない。
卓斗がいつも行く喫茶店は外から見るとかなり古びているのだ。
店内も所々に無数の傷があって、メニューも多くはなかった。
学生の卓斗にとっては普通なのだけれど、先輩の悠と行くとなれば話は別だ。
しかし、卓斗にはこの店以外に行きつけの店はない。
(僕の知ってる店で一番おしゃれな所でもあの喫茶店だけだからな…)
どうするべきか、一人で葛藤を繰り広げていると、悠が心配そうに顔を覗き込んできた。
「剣咲君? 急に黙ってどうかした?」
「い、いえ…。何でもありません」
その距離があまりにも近くにあったで、少しビックリしながらも、卓斗は笑顔でそう告げた。
「そう?…で、どこか行きたい所はあった?」
「あ…いえ。なかなか思いつかなくて…」
他には全く思いつく店がなく、申し訳なさに少しシュンとしてしまう。
だが、悠はそんな卓斗の頭を優しくなでると、自分の知ってる店でいいか、と聞いてきた。
その言葉に、さっきまで落ち込んでいた卓斗の顔がパッと明るくなる。
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