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賽は投げられたⅠ
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結局一歩も進まないまま夏休みを迎えてしまった。
長い修了式が終わって、短い注意事項を連ねるHRが終わった。
長い休みで会えない事を惜しみながら、少しずつ生徒が減って行く。
俺の友達も例外では無い。
次々俺の元にやって来ては寂しいと喚いていき、静かになると冗談めかして高笑いしながら去っていき、遊ぼうなと予定表を机に置いて、手をひらひらさせて教室を出て行った。
何で、俺が決めなきゃいけない
勝手に誘えよ
なんて今更彼には届くはずもなく、心の中に閉じ込めた。
相変わらず巡は教室の片隅で窓の外を眺めていた。
二人きりの、蝉の鳴き声と暑さだけが残る教室。
次会えるのは、夏休み明け。
それはもう話せない空気になりそうで、考えただけでも恐ろしい。
それくらい、今の俺は切羽詰まっていた。
興味は無情にも引きつけてしまう効果を持っている。
俺は無情じゃねぇけど…。
ここは勇気を出して、話そう。
どんな答えが返ってこようと受け入れよう。
大きく息を吸い込んで、吐き出すように……
「赤峰 巡!!」
彼の名前を呼んだ。と言うより叫んだ。
怠そうにこちらを向く。
その顔は無表情に近かった。
そんな無表情すら可愛いと思えた俺は、相当イかれているのだろう。
元がいいから、全体が綺麗で整ってて、まるで人形みたい。
性格は男らしそう(あの一回でそんな気がした)なのに、見た目にはあの性格の微々たるものを感じさせない物腰柔らかそうな可愛い顔。
言い方が失礼だが簡単に言うと女顔。
そんな巡の顔が俺と認識した途端に変わる。
またお前か
何でいんの?
何とでも取れそうな顔をした。
嫌そう、驚いてる、ちょっと喜んでる、本当にどうとでも捉えられる。
巡は何も話さない。
俺は一歩、また一歩と巡に近付いて、前の席に座る。
「世界の音、聴かせて」
「……何で?」
沈黙からの何で?
何で?……それはもう一つしかない。
「…俺はぁ……巡の事知りたい!」
一瞬言って良いのか躊躇った。
急に怖くなった。
嫌われたら…
これ以上話してくれなくなったら…
そんな考えを打ち消したのが、自ら決めた勇気。
その決意を握り締めて言葉を紡ぐ。
後にも先にも進めない。
賽を投げてしまったんだ。
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