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歩くエスカレーター
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昨日迷った道を回避して家に辿り着く。
自分の家よりも学校に近い巡の家。
真逆じゃない事に安堵する。
インターホンを鳴らすと、直ぐに玄関が開いて、巡が姿を表した。
顔色は昨日より良さげに思える。
ただ、不安げな足取りで門に近付いて来た。
キィーっと申し訳なさそうな音を出しながらそろりと門を開けると、一呼吸した。
一連の行為をただ立ち尽くして見てる俺。
何も言えなかった。
言葉が見つからないが正しい。
またキィーっと音を立てて門を閉める。
カシャんと閉まる音がして、同時によしっ!と声が聞こえた。
両手、拳を作って気合を入れていた。
俺も訳わからずに同じポーズを取ってみる。
何か言葉を選ぼうにも短い言葉は思いつかなくて、結局よしっ!と呟いた。
「真似すんな」
「ん、嗚呼…悪りぃ」
苦笑いして見せるも無反応。
気まずくなる中でも、まずは挨拶。
それからだ。
「はよっ」
「……ぉはよ」
恥ずかしそう、顔を赤くして返してもらえた。
それが嬉しくて、小さくガッツポーズを取る。
行こうと歩き出すと後ろからちょこちょこと着いて来る。
その行為はまるで外の散歩に出始め慣れた犬のように見えた。
学校に行くのが怖い
クラスのみんなの視線が怖い
そんな事俺は感じた事も考えた事もないから、巡の気持ちがわからない。
転んだ痛みは転んだ人にしかわからない
って言葉があるように、過去にトラウマになるような出来事を味わったであろう巡の気持ちは、俺には理解不能だ。
わかってあげたいと思うのに、出来ない事がもどかしくて、難痒くて。
せめても不安を取り除く方法はないかとない頭をフル回転させる。
馬鹿を実感する時。
幼稚な事ばかりが浮かんでは違うと消えていく。
手を繋ぐ
頭を撫でる
大丈夫と言葉をかける
どれもこれも高校生がやることじゃない。
増して男同士でする事じゃない。
「…り……っとり……服部!」
「んあっ⁉」
変な声が出て恥ずかしさに今更遅いのに手で口を塞ぐ。
何処まで行く気だよ、と俺の行動なんか無視して言葉を紡いでいく。
言われて目の前が校門だと気付く。
俺は酷く落ち込んだ。
不安を取り除く事も出来ず、祿に話す事も出来ずに着いてしまったのだから--。
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