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文化祭Ⅵ
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仲良くしたいのに、不安が募る一方で。
お陰で臆病者だと自分自身に認識させられて。
巡にはあのヘッドホンを取った世界を知って欲しいのに、行動を取る前に逃げてしまう自分が憎い。
挙動不審ってくらい、チラチラと巡に目をやる。
目も合わなければ、他を見る素振りすらしない。
「柊季ぃー?これ、持ってけ」
「お、ぅ……重たっ!」
「ったり前!昨日繁盛したら今日は口コミで大繁盛だろ⁉」
「何だそれ」
張り切る姿が馬鹿らしくて笑う。
渡された見た事もない生地の量が入ったボール。
重みを感じる腕に力を入れて、鉄板まで運んだ。
油を引いて、生地を流し込む。
紅生姜に天かす、ネギを振りかけて仕上げにタコをいれる。後はひっくり返せるいい焼け具合を待つだけ。
その間に、作り始めた事に気付いてない巡の側に行きヘッドホンを取る。
条件反射した巡は、驚いた顔でヘッドホンを持つ俺の顔を見た。
目が合う。
少しの沈黙後、俺が口を開く。「作り始めたから来いよ」と。
わかったと返事が返ってきて、俺の手からヘッドホンを取り返す。
先に戻ってピックを掴むと、丁度いいタイミングだった。
数日間、時間が許す限り練習して、昨日も緊張なく作り上げたたこ焼きは綺麗に丸くなる。
今も丸々で美味しそうなたこ焼きが、パックに詰め込まれて店頭に並ぶ。
「服部くん、ネギ切れたから補充に行ってもらっていいかな?」
「んー、わかった」
作りかけのたこ焼きを一旦近くにいた生徒にバトンタッチして裏に回る。
せっせかと具を切る生徒達。その中にネギ担当を見つけた。
ここの割り当てが上手いのかスピーディな流れ作業。
ネギ担当の生徒からボール一杯のネギを貰って、運んだ。
「ありがとう!」
なんて笑顔で言われら、誰だって悪い気はしない。
「またなんかあったら言って」なんて、社交辞令みたいな言葉を残して持ち場に戻った。
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