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無力が故に闇に誘われXⅧ
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1時間程でノート一冊読み切った。
と言っても、ぎっしり書かれていた訳ではないので、遅いくらいだ。
正座し続けている巡は足痺れているだろう。
俺も正座した方がいい気がして、床に正座する。冷たくひんやりしたフローリングの床は密着部分を痛めた。
「……」
「……えと…感想…だよな?」
「う、ん」
正直に言ってもいいものなのか、嘘を交えた方がいいのか、フォローするべきなのか、頭を幾ら働かしても答えには辿り着かない。でも、巡の足は限界を超えているだろう。俺が引き伸ばしたら、可哀想だ。
えぇい!
なんて言われ様が関係ない!
「このノートの意味わかんねぇ…」
「……」
「……」
……何か違う事口走った…?
正直に話そうと決めたのに、口から出たのはそんな言葉で。巡も俺も黙ったまま空気は重くなっていく。急いで訂正しようと口を開きかけた時、沈黙を破ったのは巡だった。
「……そう、だよな」
「……」
「…ごめん、それ返して」
そう言うと手を伸ばして俺の手からノートを取ろうとした。
それを無意識に避けて、死守。
何してんの?みたいな目で睨まれて、変な汗が背筋を流れる。
蛇に睨まれた蛙。
今なら蛙の気持ちわかるよ
じゃなくて!
「取られたら忘れるだろ!」
「はっ?」
「返したら、忘れちまった時に困るだろ……折角、友達なれんのに…」
「…最後何言ってっか聞こえない」
尻窄んでしまった声は、至近距離にいる巡にすら届かなかったらしい。
恥ずかしい事なのかどうかすらわからない程パニック状態な頭の中でただ一つ、明確な言葉があった。
“これを手放さなかったら友達と認めて貰える”
何にも埋もらされる事なく強く主張するこいつは、俺の本音だから信じてやりたいと思った。
そんな自分勝手な考えに、誇りを持つと自信がついて、何が何でもノートは離さない、と行動した。
それなら、今言った言葉は何も間違いじゃない。
「友達、なってくれんだよな?」
自信満々に声を張った--。
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