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取り戻したいⅧ - 巡side -
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柊季の友達と言っていた、一緒に家に行った男子生徒に「話があるからついて来て」と言われた。
この手の誘いは、嫌程受けて来ていい印象は全くない。幾ら柊季の友達と言っても、彼がいじめないとは限らない。仲のいい友達なら、俺の事を話しているかもしれない。現に何度も絡んで来たのだし。
にしても、どう断ればいい…?
言われて来たとは言え、断った事なんてないから断り方が分からない。
もしも、話があるの前置きに“柊季の事で”と付けられたら、俺は間違いなく即答していただろう。
ただ、今はもしもでも夢でも何でもない現実。
「赤峰、聞いてる?」
「ぁ!はぃッ!…えと、……」
「いいからついて来いよ。遅くなったら迷惑だって何でわかんねぇの?……なーんて、冗談。ごめんな?でも、来て欲しい所があるのは確か」
冗談何て言いながらも、顔は終始真面目で断る事すら許されない状況下にいた。
こうなったらと腹を括って、「何処について行けばいいですか?」と聞いてみた。彼はとても嬉しそうにニコッとして見せると、行こっ!と口にして教室を出て行く。俺は後を追うように、荷物を持って教室を出た。
既に日が落ちていた教室は、数十分もすれば日は落ちきり真っ暗になりそうだった。
家とは真逆の駅に向かって行く。
駅近くのビルの一角。カラオケと書かれた場所を指差しながら入って行く彼の後を小走りで追う。
人生二度目のカラオケ屋入店。やっぱり俺の周りだけは緊張感が張り詰めたままだ。
慣れた様子で突き進んで行く彼は、角部屋の扉を開けた。爆音ではないがそれなりの大きさで音楽が彼と俺を型取り通り抜ける。入って行った彼は、柊季に怒られながらも何て事ない態度で俺を呼ぶ。恐る恐る部屋に足を踏み入れると、眉間に皺を寄せて座っている柊季がいた。俺を見た瞬間、ひょいと無視された彼を通り越して、柊季は俺を見る。
「…め、ぐる……?」
「いや〜待たせました!連れてくんの大変でさぁ〜」
「い、やいやいや…聞いてねぇし」
「言ってねぇし」
そんな会話が聞こえて、俺は呼ばれてないと思って「……あ、、帰りますッ」と声を掛ける。一歩足を下げた時、『お前は逃げんな!!』と同時に叫ばれ、動けなくなった。
正直、柊季がいるなんて思わなかった。だって、あの誘い方に前置きも、もしも〜もなかったのだから。
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