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初デートⅦ - 巡side -
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今日だけだから
何だろう、胸の奥底にある物が黒い雫を落としていく。
胸が締め付けられたみたいに、苦しい。
今日だけ……きょうだけ……今、だけ……
無意識に近かった。はぁっと勢いに任せて息を吐いた。少しでもこの苦しい物から逃れられたらって思ったりもしたかもしれない。
でも、無理だった。
吐けば吐くたびぎゅうっと締め付けられていく。
試しなんて言い方は言い訳でもあるんだけど、周りの事なんか気にもしないで、手を繋いでみたり腕に絡みついてみたり、大胆過ぎる程に引っ付いてみたけどどれも駄目だった。
柊季は驚いたけど、その後凄い顔ニヤついてたからちょっとキモかったけど、あえてスルー。
まだ…さっきの温もりが、感触が残ってる。
唇にそっと触れれば、胸の締め付けも黒く染める何かも収まる。
その後の言葉が引っかかるだけなのかもしれない。
……やめよう、今はデート中だ。
「巡、入っていい?」
「え、あ、うん!何の店?」
「雑貨。ちょっと見て回るだけだから」
「……手…………繋いでて、いい…?」
「はい、絡めていいよ?」
柊季は恥ずかしげもない様子で手を差し伸べてくれた。俺は躊躇いながらもそっとその手に絡ませた。
俺よりも大きい手が、俺の手を包んでくれてなんだか落ち着いた。
お皿見て可愛いとか、格好いいとか、デザイン凝ってるなとか、マグカップ見て、変わった取っ手だとか、合わせたら一つになるとか。
猫の耳がついたクッションを柊季に頼まれて抱きしめてみたら可愛すぎるとか言われて、逆に同じ事させてみたりしたら何か女誘ってるみたいで…妖艶で…周りにいた女性客もそんな柊季見て頬赤らめてたからちょっとイラっとした。
見るだけだったけど、イラっともしたけど、何より楽しかった。
自分一人か家族としか回る事のなかった場所を家族以外、しかも恋人に格が上がった柊季と回れるなんて夢にも思ってなかった。新境地に立った気分。
「巡〜楽しいか?」
「楽しい!…柊季、楽しくない?」
「ッ!全っ然!!めちゃくちゃ楽しい!」
「…なら、よかった」
楽しくないなんて言われてたら、俺多分今頃帰ってるだろうな…。
楽しくないって言葉が頭の中駆け巡って、人と話す事すら嫌になって、また同じ事繰り返して自分の首を締め続けてる。
相手が柊季で良かった
柊季だから好きになった
柊季だから、、安心できる
俺、相当柊季の事好きだな…
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