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春ちゃん
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もしかすると……ほんっとにもしかするとだけど、待っててくれてるかな。
ちょっと期待して、早く生徒会室に戻りたくなる。
“悪いな、時間とらせて”
「ううん、オレもミヤチャンから色々教えてもらってるし。
じゃあ、オレ戻るねー。
……しーくんのことは、しーくんが学校に来てから、様子見てみるしかないよね。
それから弟クンのことも」
“……あぁ”
わかりやすく暗くなるミヤチャンに、少し苦笑して、部屋から出た。
すると、そこには
「あれ、春ー?」
帰っちゃったかも、でも待っててくれてたら嬉しいなぁ、って思ってた人が。
春は少し驚いたように、でもどこか焦ってるようにも見えた。
……もしかして、電話の内容、聞かれちゃったかな……
ふと、足元を見れば、オレの鞄。
もしかして、もしかしなくても。
「あ、荷物ー。
春が持ってきてくれたのー?
ありがとー!」
「いえ、もう今日は終わりですので。
電話はもういいんですか?」
「うん」
どことなく疑うような視線を感じるから、やっぱり話の内容、少しでも聞かれちゃったんだなぁ……
本当にオレは春ちゃん一筋なのに……
オレは置いてあったオレの荷物を背負って、足早に春の隣に向かった。
隣に立つと春が最近ずっとつけてる香水の香りが微かに漂ってくる。
ラベンダーの香り。
この香水は、オレが春にプレゼントした物なんだ。
この間の春の誕生日に。
嬉しい、ありがとう、って珍しく春が素直で、少し照れたように笑ってて、可愛くて……
好きだなぁって、改めて気付かされて。
って、こんなに大切に想ってるのに、春ちゃんってば、少し疑ってるみたい。
でも、直接口に出すつもりはないみたいだ。
「……誰と電話していたのか聞いてもよろしいですか?」
伺うような春の表情に、完全に疑ってることを知る。
でも、ここだけの話、聞かれた時ごまかせるように、ミヤチャンには“兄ちゃん”と似てるあだ名つけたんだよねー。
「兄ちゃんだよー」
「にい……? お兄さん、ですか」
ごめん、兄ちゃん。
でも、さすがに幽霊と話してるなんて言えないし。
「春としーくんのこと、よく話すからさぁ」
そう言ってもまだちょっと不審がってるみたいで……
「兄ちゃんから新作のケーキの相談受けててねー、オレに聞くよりいい人、いっぱいいると思うんだけどなー。
でも、相談受けてる代わりにねー、春との惚気聞いてもらってんのー」
「惚気る程のことなんて、していないでしょう……」
「してるよー。
春とこうやって帰れるだけで自慢になるもーん」
ね?って首を傾げる。
オレが勝手に仕事放って外に出ても、春は荷物を持ってきてくれる。
たぶん帰ろうとしたのは、オレの電話の内容を聞いちゃいけないって思ってくれてたんだと思うし。
春はオレの言葉に微笑んでくれた。
ふわって花が咲いたみたいな。
春って名前、ピッタリだよね。
春は照れた時とか嬉しい時に、唇を指でなぞる癖がある。
それがなんかさ、エロいんだよねー。
「春ー、そろそろヤりたいなぁ?」
「空気を読んでくれますか?
そういう雰囲気ではなかったでしょう」
怒られちゃったー。
でも、春ってばキス以上させてくれないんだもん。
そのままふたりで帰りながら、ヤるヤらないで口論してた。
って言っても、口で春ちゃんに勝てる訳ないから、唇で春の口を塞ぐ。
「あ、貴方……!
人が居たらどうするんです」
「だってー、キスしかさせてくれないなら、ずぅっとキスしてよーって思ったんだもーん」
「やめてください、せめて場所は選んでくださいよ」
「お盛んだなぁ、最近の高校生は」
「っ!!?」
「わー、ビックリしたぁ」
春ちゃんってばビックリし過ぎて、ちょっと飛び跳ねてたし。
後ろを振り向けば、赤茶の髪のイケメン先生。
「多胡T、どうしたのー?」
「時都が時雨の様子を看に行くっていうから、ちょっと仕事を任されてな」
「仕事、ですか?」
「別に大したもんじゃねぇよ、教室とかの鍵閉めたり電気消したりするだけだから。
あと、不純同性行為がないか、とかな」
ニヤニヤしながらこっちを見てくるけど、それがないから困ってるのになー。
でも春は意識してるみたいで、耳が真っ赤。
それでも一生懸命気にしないフリしてるのがもう、可愛いんだよねー。
「じゃあお前らも変なことしてないで帰れよ?
プライベートにまでは首突っ込まねぇから」
相変わらずわざとらしくニヤニヤ笑って、そのまま廊下を歩いて行った。
「さー、帰ろっか、春ちゃん」
「なんで楽しそうなんですか……」
「だって、春、真っ赤で可愛いんだもん」
「ひぅっ……!
や、やめてください!
もう遊斗なんて知りません、帰ります!」
「えっ、えー?!
ちょっ、待ってぇ!」
ちょっと耳に息吹きかけただけなのに!!
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