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校舎内でリア充共がイチャイチャしてる。
おーい、クリスマスは明日だよー?
カップルが手を繋ぐ間に行って、わざと手を放させる僕は篠宮時雨。
「…………彼氏かぁ……」
「おい、離れるな」
「あ、ごめんごめんw」
相変わらず足が痛くて会長に送り迎えをしてもらってる。
なんか昨日今日優しいんだよね。
なんでかな。
「お前、恋人とか憧れるのか?」
「憧れるっていうか……まぁ、そんな感じかな。
恋人と幸せになれたらなぁ…………なんて、僕らしくないけどwww」
「………………そういうのやめろよ」
「…………え?」
会長の声に振り向けば、存外真面目な顔をした会長と目が合った。
「えっと、気に障ること言った?
ごめんね」
「……別に」
え、ちょっと待って。
僕何言った?
恋人?
いや、でもそれは会長からフッてきたんだし、じゃあ……幸せ?
「あの、会長?」
「……お前らしいってどういうことだよ」
「え…………
僕らしい……」
僕らしくない、ってことに怒ってるの?
なんで?
「なんだろ……キャラ、とか?」
「…………キャラを作るために嘘をつくのか?」
「嘘……?
はは、何言って……
………………そう、かもね……」
僕は最初、笑い飛ばそうとした。
だけど、会長が泣きそうな顔をするんだ。
信じて欲しいなんて言っておきながら、嘘ついてちゃあね。
「ごめんね。
信じて欲しいなんて口先ばっかりだ、僕……」
会長から目を逸らして、校内のカップル達に目を向けた。
「憧れるっていうより、羨ましいって言った方が合ってるのかもね。
……そんな顔しないでよ。
もう会長に嘘はつかないから。
それに、つけないみたいだしね」
会長は黙ったまま僕と目を合わせてきた。
綺麗な青い瞳が揺れた気がした。
僕はどうすればいいのかわからなくて、「ちょっと話そうか」なんて言ってみた。
生徒会室には仮眠室が設置されている。
僕らはそこに移動した。
ここに来たはいいけど、話題が思い浮かばない。
暫く黙ったあと、沈黙を破ったのは会長の声だった。
「日月がな、お前に可愛いって言われたことが嬉しかったって話してきたんだ」
僕は少し驚いて顔をあげた。
会長は平然としながら再び口を開いた。
「アイツがあんなにも自分を悲観するようになったのはオレのせいだった。
日月はそんなこと言わなかったけど、オレのせいだ。
オレは、自分勝手に辛い、苦しいなんて言って助けを求めておきながら、日月が傷ついていたことなんて気がつかなかった。
どれだけアイツを辛い目に合わせたんだろうって、今更気付いたんだ。
優しすぎるんだ、日月は」
『僕なんか』って言ってた日月くんの表情を思い出した。
普通に言ってるのに、そう言う度にどこか疲れたように目を伏せる。
きっと無意識に我慢してたんだろうな。
「だけど、日月がお前に言われて、否定するのはやめようって思ったって言ったんだ。
…………だから、篠宮」
ふいに名前を呼ばれる。
その声色はどこか暖かくて、今まで聞いた中で一番優しい声だった。
「ありがとう。
日月を助けてくれたこと」
「……助けたなんて、そんな大袈裟なことはしてないよ。
…………でも、僕の言葉でそんな風に思ってもらえたなら……」
僕はまだ、誰かを救うことができるのかもしれない。
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