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副会長
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「ハッピークリスマスー」
「メリークリスマスだよ、アヤノw」
「あれ、そうだっけぇ?」
うーん、と首を傾げると、長い髪が肩にかかった。
そしてアヤノは、それにしても、と呟いて、目の前のツリーを見上げた。
「ホンモノのモミの木を使うなんて、やっぱりお金持ちなんだねぇ」
「そうなんだよ。
それも一番いいヤツを使い捨てなんだってw
もったいないよねw」
僕、篠宮時雨も、昼からキラキラ光ってるツリーに視線を向ける。
「ん? アヤノと、篠宮か?
なんだ、いつの間に仲良くなったんだよ」
後ろから声をかけられて振り向けば、委員長が不思議そうにこっちを見ていた。
「あれぇ、港醍と一緒じゃなかったのぉ?」
「準備まで一緒にはできねぇんだよ。
ホントは一瞬も離れたくねぇんだけど」
「うわぁ、翔ってストーカーになりそうだよねぇ」
「うるせぇ。
つーか、お前も見回りに行けよ」
「えー。
裏はあんまり動かないもん」
「もん、とか言うな。
あぁ、あと篠宮。
さっき一ノ瀬が呼んでたぞ」
「会長が?
何処に居た?」
「体育館の舞台袖だ」
「りょーかい。
じゃあ、アヤノ、またね」
「うん、じゃあねぇ」
アヤノは手を振ってから、またツリーを見上げた。
体育館を目指して歩いているとき、何処からか話し声が聞こえてきた。
聞き覚えのあるような、ないような。
まぁ、耳はいいんでね、ちょっとくらい離れててもバッチリ聞こえる。
多分、結構遠いけど、耳をすませばなんとか聞こえると思う。
『……本気ですか…………だけど…………』
うーん、もうちょっと近づく必要があるかな。
『そうですけど、周りは…………』
『周りなんかどうだっていいだろ。
春はオレが好きなんじゃないのかっ?』
『す、好きですよ、勿論っ』
あー、なるほど、ひとりは副会長だね、多分。
もう一人は誰だろう。
聞いたことあるような気がするんだけどなぁ……
『じゃあ、期待してるからな』
もう一人はそう言うなり、副会長と別れたらしい。
さて、何処に居るのかな?
僕は廊下をキョロキョロ見渡しながら歩いた。
そして、ふとカーテンが閉まっている教室を見つけた。
僕は唐突にその教室の扉を開けて中に入った。
ビンゴ♪
「な、なぜ貴方がここにっ?」
「こんにちは、副会長w
なぜ、っていうか、カーテンが閉まってたから空けておこうと思って入っただけだよ?
それより副会長こそ、こんなホコリっぽい場所で何してるの?」
わざとらしくそう聞けば、副会長は気まずそうに視線を落とした。
僕はカーテンを開ける。
「…………私は、どうしたら…………」
「…………なにか言った?」
「!!
い、いえ、何もっ……」
慌てちゃってさ。
何をする気なんだろうね。
「ねぇ、副会長はクリスマスパーティーの準備しないの?」
「…………え……?」
「ほら、今日ってクリスマスパーティーじゃん?
風紀もバタバタ走り回ってるのに、副会長は何もしないのかなーって」
副会長は眉を寄せて僕を見てきた。
「どういう意味ですか」
「さぁ?
大した意味はないよ」
明らかに怪訝な顔をする副会長の正面に立つ。
「何迷ってるの?」
「…………貴方に言う義理はありません……」
「そう?
話せば楽になるんじゃない?」
ねぇ?と首を傾げれば、副会長は目を泳がせた。
「まぁ、無理して聞こうとは思わないけどさ」
そこらの椅子に腰掛けて副会長を見据える。
そして、でも、と呟く。
「僕らに不利益になるなら、無理にでも聞き出さないと」
そう言うと、副会長の顔は、目に見えて青ざめていった。
それで確信した。
「やっぱりね。
何か企んでるんだ?」
「あ、貴方には関係……」
「関係あるんだよ。
僕、生徒会補佐だから」
戸惑ってる副会長に、「あれ? 知らなかったの?」なんてわざとらしく聞いてみる。
「…………どうしたら……どうしたらいいんですか……?
きっと……今度こそ、取り返しのつかないことになる……!」
「じゃあ話してみなよ?
僕がなんとかしてあげるから」
「っ、ですが……私は、彼を裏切ることは……」
「それって、安曇野くんのこと?」
副会長は小さく頷いた。
まだそんな恋愛ごっこに夢中なのか。
「なんて言われたの? 君の“好きな人”に」
「……彼は、会長が嫌いなんです……だから私は、あの人のありもしない噂を広めたり、貶めようとしました……
でも……こんなの間違ってる……!
いくら彼が好きでも、人を貶めるなんて……」
「間違ってることがわかっておきながら、なんでやっちゃうの?」
「…………嫌われたくない……」
「それ、変じゃない?」
副会長は今にも泣きそうな顔をあげて、僕を見つめてきた。
「もし安曇野くんが君のことを好きなら、君に会長を貶めろ、なんて言うかな?」
そう言うと、副会長は耳を塞いだ。
なんだ、わかってるんじゃん。
「やめてくださいっ……そんなこと……そんなこと聞きたくない……!」
いやいやと頭を振る副会長の手を掴んで無理矢理耳から離させる。
事実を教える僕は、最低かな。
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