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過去(時雨)9
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生徒会で仕事をしようと生徒会室に入った時のこと。
ヒュッと窓の外を何かが落ちていった。
それは一瞬だったけど、確かに見たんだ。
泣きそうな虹の顔を。
僕は持っていた荷物を放り投げて窓から下を覗き込んだ。
「嘘、だ……虹……!」
「篠宮?」
「虹っ……!」
心配する副会長を押し退け、階段を落ちるようにして下へ向かった。
上履きのまま外に出て、虹が落ちていった辺りに走っていく。
「虹!!」
虹が落ちた場所は人目につきにくい場所で、静かで、虹の周りだけ赤く染まっていた。
「嘘だろ?!
ねぇ、虹! 返事しろよ!
お願いだからっ!」
身体を揺すっても反応がない。
上向きにさせると、虹は案外綺麗な顔をしていた。
呼吸が止まってる。
脈もない。
身体はどんどん冷たくなっていく。
それでも血は止まらない。
「どうして……!
どうして、虹!
お願いだから死なないで、目を開けてよ!
お願いだからっ……!」
「篠宮、どうし……っ!!」
後ろから副会長の声が聞こえた。
多分、僕の様子を見て心配して来てくれたんだと思う。
でも、僕には周りを気にする余裕なんてなくて……
「嫌だよ!
虹っ、ねぇっ!
僕をっ……おいていかないでよ…………!」
僕は泣きながら虹の身体を抱き締めた。
冷たい…………
もう、抱き締め返してもくれない…………
「酷いよ…………」
遠くから救急車の音が聞こえてきた気がした。
「即死でした」
そう言った医者の声が、酷く無機質に聞こえた。
医者の声に泣き崩れる虹のお母さんと、それを支える虹のお父さん、目を見開いて固まる弟に、実感がなくてぼんやりしてる僕。
「なんで……なんでだよ!
時雨さん、一緒に居たんだろ!
いつも一緒だったじゃねぇか!
なんで兄貴を助けてくれなかったんだよ!」
虹の弟の景 -ケイ- が悔しそうな顔をして、僕に掴みかかってきた。
「……ごめん…………」
「ふざけんなよ!
お前が」
「景! やめなさい」
「っ…………」
景はそこで、ボロボロと涙を流した。
景の言う通りだった。
僕は、虹のこと、助けられなかった。
白い布を被せられた身体を見つめる。
「お前が殺したんだ……」
「っ!」
「お前が、兄貴を殺した」
景はブツブツと呟いた。
僕が…………殺した…………?
「こ、う…………」
血の気がない虹の顔は、もう何も感じてないみたいだった。
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