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誕生日
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いきなり篠宮先生と理事長が来た時は驚いたが、篠宮の誕生日だと聞いて納得した。
オルゴールを入れた箱と写真集を見つめる篠宮に声をかける。
「今日誕生日だったんだな。
おめでとう」
笑顔を作るのは苦手だったのに、篠宮にそう言った時、自然に笑っていた自分に少し驚いた。
そしてオレに続くように、日月が勢いよく立ち上がった。
「時雨くん、おめでとう!」
「おめでとうございます、篠宮さん」
二森も日月の後に微笑んでそう言った。
その時の笑顔は、いつもの作っているものじゃなくて、純粋にいい笑顔だと思った。
3人で篠宮を見つめると、篠宮は目を細めた。
そして、ポロ、と涙が篠宮の手の甲に落ちた。
…………え?
「し、篠宮……?」
「時雨くん、どうしたのっ?」
「何か変なこと言いましたか……?」
3人で慌てて篠宮に近寄る。
篠宮はポロポロと涙を流したまま首を横に振った。
袖で目もとを拭いているけど、全然涙は止まってない。
「ごめ……ごめんね……」
「篠宮……?」
「嬉しくて……凄い、幸せだなって……ごめんね……こんなすぐ泣いちゃって……でも……本当に嬉しい……」
おめでとう、って言っただけなのに?
そう思ったが、篠宮の過去の話を思い出した。
思い出したら、オレは無意識に篠宮を抱きしめていた。
「……かいちょ…………」
「……毎年言う」
「…………え……?」
「これからオレが毎年篠宮の誕生日に、おめでとうって言う。
プレゼントも用意して言うから」
腕の中で篠宮の肩が揺れた。
少し離れて顔を覗き込むと、篠宮は涙を流したまま笑っていた。
「…………ありがと…………」
そう言った篠宮があまりにも綺麗で……でも、儚くて……
…………愛しく見えた。
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