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怒り
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その子は顔を醜く歪めていた。
それでも時雨くんは無表情なままで……
「日月くんがどれだけ傷ついてるか、怖かったか、わかってるの?
わかってないよね。
加害者はいつだってそう。
自分勝手な感情で簡単に人を傷つける。
本当……虫唾が走る…………」
「けどっ……ソイツは……」
「日月くんが何をしたの?
君たちの誰かを傷つけた?
そんなことないよね、日月くんは強いから」
僕が……強い?
そんなことない……今だって怖くて、涙が出そうで……
「人を思いやること知らないんでしょ?」
「……ぉ、思いやるなんて、ただの綺麗事じゃない……!」
「君にとって綺麗事に聞こえるのは、君が汚いからでしょ」
「なっ!」
その子は少し肩を震わせて、時雨くんを睨んだ。
時雨くんはそれを、冷めた目で見つめている。
「か、顔がいいだけのクセに……よくも僕に楯突いたよねっ。
お前ら、いいよっ、篠宮くんも一緒にヤっちゃおう」
「い、いいんすか……?」
戸惑うガタイのいい人達に、その子はイラついてるみたいだった。
その時……
「いい訳ねぇだろ、馬鹿が」
「「「…………え……?」」」
僕と、その子と、ガタイのいい人達の声が重なった。
ドスのきいた、まるで地を這うような声だった。
この場にいるのは他に時雨くんしか居ない。
「それ強姦になるってわかってて言ってんの?
警察に突き出すぞ。
っていうか、日月くんに手ぇ出してみろ、2度と表出れねぇ様な顔にしてやるから」
ご立腹みたい……時雨くんって、本気で怒ると凄く口が悪くなるんだね……
そう言えば前にも篠宮先生の時、少し口が悪くなってた……
「骨の一本や二本で済むと思うなよ」
時雨くんの睨みに、彼らは喉を引きつらせた。
「こういうことする奴って、結局何言ったって変わんないだよな。
じゃあ、体に言い聞かせんのが一番だろ?」
ね?と微笑んで首を傾げる様は、一見、とても可愛く見えるのに、冷めた目がその仕草を恐怖に持っていく。
「っ……行くよ、お前ら!」
その子の声で、固まってた男の人達も音楽室から出ていった。
時雨くんはそれを目で確認した後、僕の前にしゃがんだ。
「時雨くん……」
「ごめんね……」
「…………え?」
「怖い思いさせちゃったよね……」
「そんな……時雨くんのおかげで、僕はなんともないよっ」
慌てて手を振ると、時雨くんは泣きそうな顔になった。
……そんな顔して欲しくないのに……
「ダメだなぁ……」
時雨くんはそう呟くと、僕を抱きしめた。
僕は驚いて、時雨くんの顔を見ようと思ったけど、僕の肩に額を押し付けていて、僕は……
そっと時雨くんの背中に手を回した。
「ダメじゃないよ……時雨くんが来てくれて、凄く嬉しかった……
ありがとう……」
じわりと肩が暖かくなった気がした。
と、同時に時雨くんが僕から離れた。
「ごめっ……」
顔をそらして袖で目を擦っている。
泣いてるのかな……?
「ふふっ……」
思わず笑うと、時雨くんは涙を浮かべたままこっちを見てきた。
「時雨くんって案外泣き虫なんだね」
「っ……!
違っ……これは……その…………」
恥ずかしそうに視線を下げる彼は、ついさっきまで怖い人達を前にしていた人とは思えない。
時雨くんは、本当に優しい人だね……
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