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ねぇ
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「あれ、時雨ぇ?
と、日月じゃぁん」
音楽室を出た先には、アヤノが居た。
相変わらず綺麗な赤い髪と瞳。
「今さぁ、ここからヘンなのがいっぱい出ていったから何かあったのかなぁってぇ」
ねぇ?と首を傾げると、長い髪が肩にかかった。
本当に女の人にしか見えないなぁ……
「ふふっ、ちゃんと男だよぉ」
「まぁ、それはわかってるけどね」
それにしても、やっぱり心が読めるんだなぁ……
すごいな……
「もしかして日月関係ぇ?」
「んー、まぁちょっとね……」
「そっかそっか、りょーかい。
今すぐアイツら調べて罰してあげるからねぇ」
そっか、裏風紀だもんね。
でも、正月まで仕事かな?
大変だね。
「それなら生徒会だって、正月からやってるじゃぁん?
それにオレは仕事じゃないよぉ。
お散歩だからねぇ」
「え、なんの話……?」
「ふふっ、忙しいって話だよねぇ?」
「そうだね」
わかってない日月くんは、不安そうにアヤノを見ている。
なんか仔犬みたいで可愛い。
「でも、今日はもう休ませるよ」
「えっ、でも……!」
「そうだねぇ、休みなよぉ。
だってさぁ……怖かったんでしょぉ?
動けなくなるくらいに……ねぇ?」
「えっ……!」
そうだったんだ……
やっぱり僕が……
「ねぇ、時雨。
オレが日月のこと送ろうかぁ?」
「え、いいの?」
「あっ、僕一人で帰れるよっ。
僕なんかに構わなくていいから……」
「なんかって言わないで」
あ……やばっ……
つい、キツい言い方になっちゃった……
慌てて「ごめんね」と言えば、日月くんは首が取れるんじゃないか、ってくらい頭を横に振った。
「日月くんはもっと自信持っていいと思うよ」
「そうだよねぇ。
ちょっと卑屈過ぎるよねぇ」
「で、でも……僕じゃ、やっぱり……」
俯く日月くんの前に立ったアヤノは、日月くんの顔を掴んで上を見させた。
「日月ってさぁ、綺麗な目ぇしてるよねぇ」
アヤノの細くて長い指が、日月くんの目尻をなぞる。
日月くんは困惑してアヤノを見つめ返していた。
「でも……変な目って……」
「何処がぁ?
綺麗なグレーだよぉ。
オレはその色好きだなぁ」
ねぇ?とこっちを見るアヤノにならって、僕も日月くんの目を覗き込む。
確かに綺麗なグレーだ。
「そうだね。
今まで気づかなかった……」
「もったいないよねぇ」
「うん」
次第に日月くんの顔が赤くなっていく。
恥ずかしいのにアヤノの手を払えないとか、本当、健気。
「…………よしっ。
オレが散髪してあげるよぉ」
「え…………えっ、やっ、僕はこのままで……」
「前が見えづらいから前を向けないんでしょぉ?
大丈夫……日月の味方は沢山いるよぉ」
ねぇ?
アヤノは度々そうやって僕に意見を求めてくる。
でも、答えはどうだっていいみたい。
不思議だね。
「重い荷物なら、僕も持つよ。
日月くんが悪いわけじゃないんだから、もっと堂々としていいと思う」
「…………あ、ありがとう……」
ほんのりと頬を赤く染めて、日月くんは目を伏せた。
アヤノはそんな日月くんの頭に手を置いて、目を細めた。
「それじゃあ送っていこっかぁ」
アヤノの言葉に、2人は歩き出した。
それを見送ると、生徒会室に戻って、一人で仕事をした。
別に急がなくてもいいんだけど、できれば少しくらい進めておきたいからね。
仕事があらかた片付いて、そろそろ帰るかな、というとき、ふと、会長のことを思い出した。
そう言えば、風邪だったなぁ……
会長にはいろいろお世話になって……る?し、看病でもしに行こうかな。
あ、でも、僕、結構風邪うつりやすいんだよね……w
…………結果、スポーツドリンクと冷却シートと、食べやすそうな物を、寮にある大型店で買って、会長の部屋に向かった。
寮になんで大型店があるのかは、ここが金持ち校だから。
あまり深くは考えなくていいよw
そんな訳で、僕は今、会長の部屋の前にいる。
買ったマスクをつけて、いざ出陣。
『ピンポーン』
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