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アザ
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篠宮が渋々シャツを捲り上げた。
細くて白い腹部に青いアザがあった。
これは、痛いハズだ。
オレなら殴ってきた睦月を生徒会室の窓から落としてやるレベルだな。
後ろで二人が声を漏らした。
「うはぁ、グロいね」
篠宮は一人呑気にそう呟く。
「はぁ……よく怒らないな」
「んー?
別に、治るからいいんじゃない?」
優しいのか、呑気なのか……
「オイ睦月、そこからシリコンの袋取り出して、氷入れて渡せ」
「あ?
なんで俺が」
「テメェがやったことだろ」
アイツには悪気や謝罪の気持ちはないのか。
腹が立つ。
オレは篠宮の腹部に触れる。
「痛いか?」
「うん……」
脇腹や背中に触れて同じように聞いてみる。
「背中は痛くないけど」
「そうか。
骨にも内蔵にも損傷は無いみたいだな」
「会長、手馴れてるね」
「まぁ、そうだな」
「医者志望とか?」
「あぁ」
「え、ほんとにそうなんだ、すごいね」
睦月から袋を受け取り、シャツを戻した篠宮に渡す。
「これで冷やしとけ」
「うん、ありがとう」
にこ、と笑う篠宮に、胸のあたりが苦しくなった。
「それから、今日はもう帰れ」
「え……でも」
「土日くらい自分達で勉強させろ。
お前だって自分の勉強時間がほしいだろ」
「や、まぁ、そうなんだけどさ」
うーん、と歯切れの悪い答えと苦笑が返ってきた。
「わかった。
ならオレが強制的に帰らせる」
そう言うと篠宮はふいに顔を赤くした。
怪訝に思って見つめてると、篠宮はパッと顔を逸らした。
「自分で帰れるよ、うん。
じゃ、そういう訳だからっ、いたたっ」
立ち上がった篠宮は腹の痛みにもう一度座った。
帰れるって、無理だろ。
大丈夫か、と声をかけようとして手を伸ばすと、頬を赤く染めた篠宮が慌てて首を振った。
「姫抱っこは無理っ。
ほんとに、アレ、恥ずかしすぎるからっ」
「姫抱っこだぁ?
へぇ……なるほどなぁ」
後ろでニヤニヤし始めた睦月に、篠宮は更に顔を赤くさせた。
「う、煩いな、委員長に関係ないでしょっ。
ほら、早く出てってよ」
しっしっ、と手で払うと、二人は背を向けた。
「本当にごめんなさい、時雨さん」
「あ、それに関しては全然気にしてないよ。
っていうか委員長、顔キモイからっ」
「んだとっ?!」
「翔、行きましょう?
これ以上は時雨さんに迷惑です」
二人が出ていって静かになった保健室で、篠宮はため息を吐いた。
そして顔を手で覆っている。
「大丈夫か?」
「うん……」
「一人で帰れるようには見えないけどな」
「うーん、そう、かもね……
もうちょっとじっとしてればよくなると思うんだけど……」
「なら、ベッド借りるか」
「え、でも」
「三つもあるし、滅多に使う奴なんて居ないだろ。
楽になるまで寝ていればいい。
荷物は取ってきてやるから」
「ん……ありがとう。
じゃベッド貸してもらおうっと」
篠宮は腹部を抑えながら、一番手前のベッドに横になった。
「隈が凄い。
しっかり寝てないのか?」
「んー……かも……」
目を閉じた篠宮はすぐに寝息をたて始めた。
テスト勉強期間で、仕事も無いはずなのに寝不足って、夜遅くまで勉強でもしてんのか?
眠った篠宮の頭を撫でる。
柔らかな黒髪が触り心地いい。
ベッドのカーテンを閉めて、オレは篠宮のカバンを取りに、生徒会室に向かった。
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