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終業式
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明日は終業式。
明後日から春休みに入る。
12月に編入して来て、そりゃまぁ色々あって。
ほんの三ヶ月、や、四ヶ月近いかな。
あっという間だったようにも、凄く長かったようにも思える。
こんなに楽しくて充実した四ヶ月弱。
僕は忘れることなんてできないと思う。
でも、それだけじゃなくて、いろんな人が、実はたくさんの思いを抱えてたこととか知ったし、“僕だけじゃないんだ”って。
“僕だけが不幸だなんて、そんなことないんだ”って。
あれ……そんな考えだったなんて恥ずかしくない?
あれ、コレって一種の黒歴史?
…………忘れた。
そんな考えだったなんて忘れたー。
「篠宮、大丈夫か?」
「ん? 何が?」
「さっきから俯いていたから……」
「え……あ、うん。
大丈夫大丈夫」
へら、と笑ってみせる。
「なんか、色々あったなぁ、って。
まさか会長とこんな風に喋るとはさ」
「そうか?」
「だって、最初の方、すごい嫌われてたっぽかったしw」
そう言うと、会長は複雑そうな顔したまま黙っちゃった。
言っちゃマズかったかなぁ。
「……人間不信」
ポツリ、と会長が呟いた。
「人間不信だったんだ……悪かったな」
「全然気にしてないよ。
今思えばいい思い出だって」
そんなことを言いながらゆっくり歩を進める。
嫌な感じがする……そんなの、気のせいだったって言い聞かせるように、無理矢理笑顔を作る。
「春休みは嫌でも帰らなきゃいけないんだよね?」
「あぁ、一般生徒は学年毎に部屋が変わるからな。
3月29日から4月2日まで、寮は立入禁止だ」
「帰ってもなぁ…………やっぱ会長も帰るの?」
「どうかな。
生徒会は部屋は次の生徒会役員決めまで動かなくてもいいから、荷物もそのままでいいし、ホテルなんかに泊まって過ごすかもしれないな」
「んー…………あ、じゃあさ、僕の家、来ない?」
僕の提案に、会長は少し眉を寄せた。
「悪いんじゃないか?
家族も居るだろ?」
「さぁ。
兄さんは多分、要さんとどっか行くでしょ。
普段出掛けられないからって、前の学校の時も会えなかったもん。
…………ま、僕がちょっと意地張っちゃって、会い難かったっていうのもあるんだけどね」
まぁ、ほんとの兄弟じゃない、って、そういうのがたまにクルんだよね。
「父さんは海外出張ばっかで暫く会ってないし、帰って来なそうだしなぁ」
何の仕事をしてるのかはあんまり言ってはくれない。
秘密厳守な仕事だけど、高層マンションの最上階に余裕で住めるだけの収入はある、ってことくらい。
「ひとり、ってことか」
「そうだね。
寂しいよ、あんな大きい家でさ」
だから、ね?
なんてちょっと強引に。
だって、嫌だよ……
もう、寂しいのは嫌。
無駄に部屋数があったって、人が居ない。
暗所恐怖症っていうんだっけ?
昔は好んでた暗い場所が、いつからか怖くなった。
や、暗いだけならいいんだ。
暗くて、無駄に広いのが嫌。
ひとりを実感させられる。
「それなら、甘えさせてもらおうか」
全部包んでくれるような、そんな優しい微笑み。
カッコよ過ぎ……
大好き過ぎてヤバいなぁ。
「なんか楽しみだなぁ」
ひとりじゃない。
そんなことが、ほんとに嬉しくて……
会長に依存してるみたいな。
僕は春休みの楽しみに胸を膨らませて、次の日の終業式を寝て過ごした←
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