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嫌な予感
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「なら問題ないだろ、さっさとやれって」
俺はもう一度、木島を促した。
木島は観念したのか、
少し考え込んでからマイクを握りしめた。
「皆さん!お待たせいたしました!
いよいよクイーンの発表です!!」
その台詞をきっかけに照明が落とされると
白け気味になっていた会場が再び沸騰した。
―――『ドロドロドロドロ……』
ドラムロールがスピーカーから流れ
それに合わせて『お―――――!?』と
煽る声が押し寄せた。
「女子からの圧倒的な支持を受けたモテ男!
お茶の間でも女性のハートを鷲掴み!
我が校・期待の星!
周防恭介の隣をゲットしたのは…………」
―――『ドロドロドロドロ……ダダンッ!』
「同じく2年A組、倉敷美緒さんでーす!!」
パッとスポットライトで照らされた美緒は
両手で口元を押さえ感動を表すと
囃し立てられながらステージに上がり
顔を朱色に染めて俺の隣へ来た。
「おめでとうございます!
クイーンに選ばれた感想はいかがですか?」
「ふふ!なんだか照れちゃいます……
………ね?恭介」
そう言って美緒はか弱い少女のように
俺の袖を控えめに引っ張った。
「下の名前で呼ぶなんて
もう恋人同士みたいですね!」
「やだぁ!恋人だなんてー、
まだ付き合ってないですよぉ」
俺は台本通りの茶番劇を流しながら
横目で木島を睨んだ。
その視線に耐えられなくなったのか
木島が切れ悪く言い始める。
「あはは…はは…と……えー…あの、
こーこーでー…ですね…
もうひとつ、発表が……」
「えぇ?発表?なになに?」
美緒が楽しそうに
言葉を弾ませながら答えると
耳元で俺に囁いた。
「木島のヤツ、アドリブ多すぎじゃない?」
「………………………」
―――『ドロドロドロドロ……』
パッと照明が消え、またドラムロールが響き
え?何?どういうこと?、と
戸惑う声が四方から聞こえた。
「えー…実は今回、
クイーンがもう1人……」
「は?」
「え?」
もう1人って……
おいおい、どうなってんだよ。
美緒がツカツカと木島に近づき、
持っていたマイクを奪い取ると
電源をOFFにした。
「ちょっと、何コレ!どういうこと!?」
「全く同じ票数の人がいちゃいまして……
………はは!」
「『いちゃいまして』じゃないわよ!
さっき確認した時は
大丈夫って言ってたじゃない!」
「あの時は大丈夫だったんですよ!
全員の投票が終わった時点で
1票差で倉敷さんが
クイーン確定だったんです!」
「じゃあ何でこんなことになってるのよ!」
1票差……………?
なんか、スゴく嫌な予感がする。
「美緒、その確認っていつの話だ?」
「いつって……!
恭介が来る少し前よ!」
美緒の言葉に
俺は思わず息を呑んだ。
……………間違いない。
俺の中の疑念が確信に変わる。
「木島、どういうつもりか知らないけど、
ちゃんと台本通りにやらないと
研究費の件は無効よ!」
「そ、そんな!無理ですよ!
実行委員のほとんどが
結果を見ちゃってますし!
不正がバレます!」
「はぁ!?寝ぼけたこと言ってないで
なんとかしなさいよ!」
俺は今にも掴みかかりそうな美緒から
マイクを取り上げて木島に投げると
「ちょ………恭介!?」
般若のような美緒の顔に背を向け
右手で顔を覆い、大きくため息をついた。
――――――――たぶん、
…………やらかしたのは木島じゃなくて
俺だ。
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