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隣に並ぶ影
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『願った』って言っても
誰にも気づかれないように
短冊の隅の方に願い事を
小さく書くぐらいの気持ちだったんだ。
そんな大層なものじゃないんだよ。
ただほんのちょこっと
欲を出しただけじゃねぇか………
なのに…………
「椎名くんおめでとうございます!
ささ、ステージまでお越し下さい!」
……………俺さ、
世界を大冒険して球を7つ集めて
『出でよ~』なんて言った覚えねぇけど!?
あ――――――っ!
マジであり得ねぇ!
神なのか龍なのか知らねぇが
のし付けて返してやるから
ちょっとこっち来い!!
―――俺の心の断末魔は
同じ場所でグルグルとループしているだけで
皮肉にも会場は
今日一番の盛り上がりを見せていた。
「え?なに………男なの?ちょっと、冗談でしょ?」
美緒が呆れた顔で木島に説明を求める。
「ルールでは男子の票を一番集めた人が
クイーンってことに………はい……」
木島が
小さくなりながら答えた。
……………そうだ
やっぱり木島のせいじゃね?
俺の投票が残ってたのに
コイツが全員投票が終わったって
勘違いしたからこうなったんだ!
やっぱ
俺のせいじゃねぇ!
タンタンと軽い足音をたてながら
誰かが階段を昇る音でハッと我に返った。
「どうぞどうぞ!こちらへ…」
俺の隣へ行くように、という
木島の指示にためらうことなく、
奴は美緒とは反対の方へついた。
―――――…………
やべぇ………
心臓が破裂しそう………
椎名がどんな顔をしているのか見たかったけれど
俺は怖くて視界に少し入れるのが精一杯だった。
「おめでとうございます!椎名くん!
今のお気持ちはいかがですか?」
「…………………」
「あれ?聞こえなかったのかな?
今のお気持ちは?」
「…………………」
きっと椎名は今
腹の底からため息が出るほど憂鬱で
この状況に嫌気が差しているに違いない。
「ちょっと、いい加減にしてよ!
マジで意味わかんないんですけどっ」
美緒は今まで被っていた仕事用の自分を脱ぎ捨て
岩に立つ虎の如く吠えた。
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