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求めた代償
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放心状態の俺の隣で
美緒が木島にコソッと話しかけた。
「木島、最初からこのつもりだったの?」
「はい、みんなの前で周防くんが指名すれば
誰も文句は言わないはずです……」
「なんだぁ、早く言ってよー」
美緒の機嫌が直り
ホッとした様子の木島は
「上手いこと軌道修正してくださいよ~?」
と俺に向かって親指をビシッと立てた。
坂崎も木島の案に納得したのか
舞台袖まで戻っていく。
俺が椎名を選ばないと
確信しているんだろう。
「選ぶ方法は簡単です」
木島の言葉を合図に、また会場が暗転し
椎名と美緒にスポットライトが照らされる。
「選んだ方に
……………キスしてください!」
…………何の罰なんだ、これは。
求めたことへの対価だとしたら
ずいぶんとぼったくってくれる。
ま、
自分のケツは自分で拭けってことか………
「では、お願いいたします!」
………迷うな。
美緒を選ぶ理由はたくさんあるが
椎名を選んでも何の得にもならない。
坂崎には恨まれるし
美緒にはキレられるし
男子を敵に回すし
女子にはホモのレッテル貼られるし
それに、
本当は椎名だって
一刻も早く
ここから去りたいはずだ。
俺は美緒の方へゆっくりと足を進める。
腰を引き寄せてアゴに手を添えて
ドラマのようにキスをすれば
番宣効果はバッチリだ。
だから、迷うな。
……………………
…………………………
…………………………
気持ちに忠実に従った俺の目が
椎名の方へ動いた。
――――……ドク、ドク、ドク
椎名の横顔を見た途端に
長い時間、閉ざされていた心の部分に
熱い血が通っていく
なんでだよ…………
失った時に自分がどんな酷い状態になるか
わかってるじゃねぇか。
なのに
なんでこうも
椎名を求めてしまうのだろう。
けれど、これがもし
本当に神様がくれた
最後のチャンスだとしたら?
お前に手を伸ばすことで
この呪われた運命を
変えることができるとしたら?
―――――――――――――
――――――――
心のリミットが
微かに外れる音がした。
ごめんな、美緒。
あとで
俺をボコボコにしていいから。
俺は静かに向きを変えると
か細い椎名の体を
壊れないように
できるだけそっと優しく
自分の腕の中へ
抱き寄せた。
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