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その手を離さないで
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「さぁ!真実の鍵を手に入れるのは
いったい誰か!
二人のうち
どちらとキスするかは……
あなた次第だぁぶはっっ!」
先輩は長い足をくり出し
ぐるぐるメガネを吹っ飛ばした。
「何だよその真実の鍵って!
あー…あれかぁ……
鍵が入ってる宝箱の鍵を開けるための
鍵が入ってる宝箱を見つけるみたいな?
………めんどくさすぎて
インパスも効かねぇよ!
画面の文字を
赤く染めたくなかったら
さっさと鍵を出せっ!
このクソメガネがぁ!」
「む……無理ですよ
鍵は1つしかありませんから」
「はぁ?無理ってなんだ
お前のコマンドは
『出す』しかねぇんだよ!」
さ、最悪だ……
先輩もろとも
体を拘束されてしまったら
辞退なんてできない。
しかも
周防先輩と2日間もいっしょだなんて
身が持たないよ!
「あったぞ!」
突然、
人の群れから声が上がった。
…………うそ!早っ!
冷凍食品並みの
お手軽さじゃないか!
僕と先輩が
じっと声がした方を見ていると
「こっちにもあったぁ!」
違う場所から
また声が上がった。
何!?なんなの!?
至るところで
『ピー』とか『チン』とか
鳴ってますけど!?
「ちなみに鍵は100個ありますが、
99個はダミーです」
ぐるぐるメガネ……もとい、
ダボハゼメガネは
身なりを整えながら
しゃーしゃーと言った。
先輩は口を開きかけたけど、
数名が人の群れをかき分け
ステージそばまで迫ってくるのを
確認すると
「マジうぜぇ………
椎名!
とりあえず今は逃げるぞ!」
赤い手錠に繋がれたまま
僕の手をパッと取って
走り始めた。
そんな僕たちを見て
体育館にいる全員が熱狂する。
―――ドクッドクッドク…
ちょっと待って!
まだ心の準備が………
先輩が振り返って
何かを言っているけど
ぜんぜん聞こえない。
ポカンとしていると
先輩は急に立ち止まって
繋いだ手を引っ張り
ぐっと顔を近づけてきた。
「ぼーっとしてんじゃねぇよ!
いいか!
手首を痛めたくなかったら
ぜったいに俺の手を離すな!」
「は、はい!」
もつれそうになりながら
慌てて先輩についていく。
―――お互いの手首を
守るための行為なのに
――――たった
それだけのことなのに
さっきまでの
罪悪感も
後悔も消え失せて
繋いだ手から
隠しきれない気持ちが
ポロポロと溢れていった。
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