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好きになっちゃダメなのに
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――――気づかれちゃうかな……
でも先輩
走るのに夢中になってるし……
……少しだけなら……
いいよね。
僕は
細くて綺麗な先輩の手を
そっと握り返してみる。
その瞬間
僕の行動に驚いた先輩は
また振り返り、目を見開いた。
「いや!違うんです!
手が抜けそうだったからつい……っ!」
聞こえていないとわかっていても
とにかく言い訳をして
全身全霊、誤魔化した。
気づかれちゃったじゃないか!
あぁ、恥ずかしすぎるっ!
しかし
先輩は何事もなかったかのように
すぐに前を向いた。
………あ、あれ?
バレて……な………
―――トクン……
―――トクン……
――――スローモーションのように
流れる景色の中で
先輩が
僕の手を
より深く、さらに強く
握り直した。
『ぜったいに俺の手を離すな』
………離すわけ
ないじゃないか。
理由はどうであれ
僕は貴方が目的で
ここまで来たのだから。
―――――あぁ……
………もう、ダメだ
抑えられない………
脆い箱が握りつぶされ
中身が飛び散っていくように
心の壁が一瞬で決壊し
ドロドロと邪な感情が
垂れ流しになる。
――――奥へ
―――――――さらに奥へ
誰も触れられたことのない
僕の奥深い場所で
この人と繋がりたい。
心を焦がす
あの蒼い炎を
中へ中へと
誘い入れて
内側から
燃やし尽くされたい。
真っ白なシーツに
次々と黒いインクが
染み込んでいくように
僕の理性が
徐々に醜い魔物に食い尽くされていく。
―――人はひと度
欲望渦巻く奈落へと堕ちたら
這い上がることは
容易ではない。
たとえ逃れることができたとしても
きっと
以前の自分には
もう戻れない。
―――二人で
雑踏の世界を駆け抜ける。
先輩は
空いている右手右腕を使い
時には蹴りを入れ
伸びてくる手や押し寄せる人波から
僕を守りながら
体育館から脱出した。
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