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先輩の真意
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「食わねえの?」
騒ぎが一段落し
テーブルの上に所狭しと並べられた
たこ焼きや焼きそば、おでんなどを
片っ端から食べながら
先輩が言った。
「先輩が考えてることは
僕にはわかりません」
僕は竹串でたこ焼きをつつきながら
正直な感想を述べた。
さっきのこともそうだけど
どうしてプレハブ小屋で
最後までしてくれなかったのか
そればかりが頭を巡る。
僕に魅力がないから?
嫌いだから?
今朝のは仕方ないとしても
さっきのは
それなりに覚悟してたのに……
理由が知りたかったけれど
怖くて何も聞けない
………よかったじゃないか
相手にされなかったおかげで
今ならまだ真っ当な道に引き返せるし
別に先輩の事なんか……
好きでもなんでもないんだから
だけど、気持ちとは裏腹に
先輩の一連の行動に
僕の胸はズキズキと痛んだ
「このゲーム、実はドラマの番宣のために
用意されたものなんだよ」
先輩は僕がつついていたたこ焼きを
箸でつまんで自分の口に放り込むと
求めていた説明とは違う話を始めた
「番宣?」
「そ、事務所が木島……ぐるぐるメガネに
頼んで票数を少し弄らせてもらったんだ」
そんな裏事情があったのか………
華やかな芸能界は
TVに映るほとんどが演出されたものだと
知ってはいるけど
こうして目の当たりにすると
僕の持っている
『周防恭介』のデータのほとんどは
偽りなのかもしれない。
今、目の前にいる彼は
芸能人としての『周防恭介』なのか
それとも………
「……確かに、芸能人である
お二人を景品にすれば
これ以上にないくらい
盛り上がりますもんね」
ふと疑問に浮かんだことを
先輩にぶつける
「機械か何かのトラブルで
僕が同じ票数になってしまったんでしょうか」
先輩は食べるのをピタリとやめると
じっと僕の目を見てから
「………さぁな」
そう小さく言って
コーラを少し飲み
箸を置いて
背もたれに深く腰かけた。
「俺と美緒が事務所の商品である以上は、
誰かの手に鍵が渡ることは
まず『ない』と考えていい」
そうか……
だから逃げるのをやめたのか
僕といっしょにいたくないわけじゃ
なかったんだ……
なんか、
少しだけほっとした。
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