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幸せの象徴【side/周防 恭介】
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いつ以来だろ、
あんなに笑ったのは……
…………たぶん10年前
周防夫妻に引き取られる前日
『父さん』に
肩車をしてもらった時か……
誰かとずっと一緒にいられる喜びと
一人じゃない安心感に後押しされ
生まれて初めて
我が儘を言ってしてもらった肩車は
すごく照れくさかったけれど
舞い上がるくらいに嬉しかった
家族の記憶
最高に幸せで
残酷な記憶……
「先輩」
「ん?」
「手つなぐの……やめませんか?」
先を行く椎名が
俺の手を遠慮がちに握り
耳まで真っ赤にしながら訴えた
「なんで?」
「だってほら、みんな見てますし……」
チラッと周りに目を動かすと
きゃあきゃあと女子たちが騒ぎ
男子は指を指しながら
ざわざわと耳元で話し合っていた
「………嫌?」
「いえ、そうじゃなくて
先輩が誤解されないかなって……」
余裕ないくせに俺の心配とか
マジ可愛い………
俺のイタズラ心に火がつく
椎名の手を引っ張り
壁に身を寄せると
「せ、先輩!?」
「じっとしてろ………」
椎名を握っていた左手を
手錠に繋がれたまま高く持ち上げて
壁に押しつけ
右手で椎名の顎を掴む
「や、やだ先ぱ………こんなところで…」
「我慢できない……
……今すぐ……お前が欲しい……」
そのやり取りを見ていたギャラリーから
『きゃ――――――っ』
『おぉお―――――っ』
どよめきとピンク色の悲鳴があがった
手で口元を隠し
遠目から
キスをしているように見えるくらいまで
椎名に近づく
「サービス精神が旺盛なんですね」
俺の魂胆を読んだ椎名が
目を細めて皮肉をはらんだ口調で囁いた
「お前だってノリノリでやってるくせに」
「先輩に付き合ってあげただけです」
ふて腐れたように
椎名は目を閉じた
その様子に
プッと吹き出す
「もういいんじゃないんですか?
近づかれたら
演技だってバレちゃいますよ?」
椎名の言う通り
本当にしているのか
確認しにきた奴らの気配を
すぐ後ろに感じた
………………………
俺は素早く唇を近づけて
少しだけ開かれた椎名の口に舌を忍ばせる
「!!………っ……」
椎名は自分の体が驚き狼狽するのを
周りに気づかれないように
震えながら耐えていた
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