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美緒と和臣【side/―】
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体育館の裏でしゃがみ込み顔を覆っている
倉敷美緒を見つけた真柴和臣は
隣に静かに腰を降ろした。
顔を上げなくても
誰が来たのを知っていた彼女は
ピクリとも動かず
大きなため息をついた。
「……何しに来たの」
「恭介が見つかった
……中庭にいるらしい」
「あ、そ」
「行かないのか?」
「和ちゃん一人でいけば?」
「倉敷を一人にはできない」
美緒は勢いよく立ち上がり
腰に手をあてながらふんぞり返った
「はぁ?
まさかこの私が大衆の面前で
恥をかかされたくらいで
落ち込んでると思ってるの?」
「逆。誰かの魂を
神様へ献上しないかが心配」
「……あんたも冥土の土産に
コレが欲しいのね」
美緒は右手を握りしめ
わなわなと奮わせたが
和臣から
ミネラルウォーターを差し出されると
彼女は引ったくるように取り上げ
グビグビと飲んだ
「たく………
これでも芸能人の端くれなんだし
むやみやたらに人は襲わないわよ」
美緒が不服そうに口を尖らすと
和臣はニコッと笑い
半分に減ったミネラルウォーターを
受け取った
「あーっ、信じらんない!
私よりも年下の……
しかも男に負けるなんて……っ!
何なのよアイツ!
男のクセに可愛すぎなんだけど!?
1年の……名前なんだっけ!?」
「椎名春馬?」
「そう!そいつよ!
いったい何者なの?」
「学年一の秀才。
レベル2つ上の高校に行けるくらいの
頭脳の持ち主」
「はぁ?なにそれ
恭介やアンタじゃあるまいし……
そんなに頭いいやつが
何でわざわざこんなところ通ってんの?」
「好きな人を追いかけてきたって
噂を耳にしたことがある」
「へぇ……誰?」
「さぁ、そこまでは」
「ふーん……意外とロマンチストなのね
恋で身を滅ぼすタイプ?
まぁ、
恋にひた向きな奴は
嫌いじゃないけど」
美緒の受け答えをサラリとこなしながら
和臣はステージでの出来事を思い出していた
美緒を含め
成り行きを見ていた全員が
倒れかけた彼を助けるために
彼のところへ行ったと思っている
しかし、和臣だけは気づいていた
恭介が自らの意思で
『椎名春馬』を選んだことを。
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