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3人の関係
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理由までは
わからなかったが
施設でも我が儘なんて一切言わず
与えられるまま
言われるままに生きてきた恭介が
あんな風に
意思表示をするところを
和臣は初めて見た
少なくとも彼が椎名春馬に対して
何らかの感情を持っているのは確かで
それは、きっと
今後の3人の関係が大きく変化するきっかけに
なるかもしれない、と
和臣は直感的に考えた。
「もっと考えたいの
どうすれば恭介が私のモノになるか」
「そうか」
「『そうか』……ですって?
言うことはそれだけ?」
和臣は肩を竦めた。
「あ~~っ!もうっ!
人が火力全開にしてんのに
煮え切らない奴ね!
そんなんだから、あの本家のクソババアに
いいように利用されちゃうのよ!」
美緒はハッと口元を押さえる
「ごめん、言い過ぎた」
「いや、かまわない」
お互いの家庭のことは
『口を出さない』『触れない』
いつの間にか
それが3人のルールになっていた
施設では
いろいろな事情を抱えた子供たちで
溢れていて
外を出れば
憶測が誤解を生み
あることないことを言われ
傷つくことも少なくなかった。
特に恭介は
自分を引き取ってくれるはずだった
周防夫妻が亡くなったことで
大人たちからの誹謗中傷がひどく
莫大な遺産の
相続争いに巻き込まれた彼は
嫉妬や妬み、恨み
金欲にまみれた大人たちによって
心を汚され
粉々に壊れていった。
まだ子供だった美緒と和臣は
どうすることもできず
せめて自分たちの間では
家庭の事情や過去、環境を越えて
「普通の友達」として
お互いを支えることで
自分の存在意義を
見出だそうとしていたのかもしれない。
「とにかくっ、
私は恭介を誰にも譲る気はない
『椎名なんとか』だろうが
和ちゃん、あなた相手だろうとね」
和臣が黙って頷くと
美緒は額に手を当てて
さっきよりも深くため息をついた。
「本当にわかってんの?
………ま、いいわ
お互い、
ここらへんで決着つけない?」
「決着?」
「文化祭の間に、恭介に想いを伝える」
一ヶ月前に美緒から
文化祭への参加を決めた、と
連絡を受けた時
こうなることを予想していた和臣は
彼女の申し出に驚くことなく
いつも以上に冷静だった。
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