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初デート【side/椎名 春馬】
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「へぇ、文化祭の出し物の割には
ずいぶんと手が込んでるな」
周防先輩はモダンカフェ風に
装飾された教室を見渡しながら言った
いつも過ごしている教室に
先輩がいると思うと
自分の部屋に招き入れたみたいで
なんだかドキドキする
「パティシエを目指している
女の子が作ってますから
きっと美味しいと思いますよ」
そう答えながら
僕もキョロキョロと辺りを見回した
「落ち着きないぞ、どうした?」
「い、いえ………」
僕はあの二人が
いつ教室に入ってくるか
内心ヒヤヒヤしていた
一応、ここへ入る前に
彼らがいないかを確認したけど
現れたらきっと冷やかしたり
余計なことを言ってくるに決まっている
今朝から今までの流れを
大まかながら知っているわけだし
教室を出た後も
注意しなくちゃ……
「甘いの、好きなの?」
先輩が先に出された紅茶を飲みながら
質問した
「はい!3食スイーツで生きていけます」
「ふーん………」
つい2、3時間前
僕が並べていたショーケースの中から
フルーツタルトが
甘く爽やかな香りと一緒に出てきた
あれがもうすぐ
自分の前にやってくると考えただけで
顔が綻んでしまう
――――――パシャっ
突然シャッター音が聞こえて
顔を上げると
先輩がスマホで僕の写真をもう一度撮った
「な、なにしてるんですか!?」
「んー……記念?」
「記念?なんの?」
「一枚目は『カワイイ記念』
これは…………『初デート記念』かな」
そう言って
先輩はスマホの影から顔を少し出して
イタズラっぽくニッと笑った
またからかって……っ!
ついでに
さっきのキスも思い出した僕は
赤く染めた顔から湯気を出した
「へ、変なことを言わないで下さい!」
「変なことって?」
「だからっ!カワイイとか……って」
先輩を責めるために
身を乗り出した拍子に足をぶつけてしまい
テーブルの上で休ませていた
手錠付の手と手が触れ合った
「すみませ………っ」
咄嗟に手を引っ込めようとすると
先輩が素早く僕の手を取る
「急に動くな、怪我するぞ」
強く握られ
全身の血液が沸騰するくらい
かぁぁっとなった
「………みんな見てますから……
……離して下さい………」
「………………」
教室には
僕たちを含めた5~6人くらいの客と
当番で作業している
数名のクラスメイトがいた
本当に見られているかどうかは
わからなかったけれど
騒がれたりして
先輩とゆっくりできなくなるのは
絶対に嫌だった
先輩はしばらく握りしめた後
手の甲に触れた親指を
指先まで滑らせ
最後は名残惜しそうに離れた
やめてよ……
そんな風に離れられたら
逆にこっちから
握りたくなるじゃないか……
僕だって
嫌だから言ってるわけじゃないのに
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