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作戦
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「お待たせいたしましたぁ!」
カフェエプロンを着けた
クラスの女子が
甘い空気を割くように
ケーキが乗った皿をトントンと並べていく
「わぁ……美味しそう………」
目の前に現れた
フルーツタルトに夢中になった僕は
苺やキウイ、バナナ、オレンジが
キラキラ輝く姿をうっとりと眺めた
もう見た目が美味しくて
食べるのが勿体ないくらいだ
「美味しそうですね」
今度は先輩に同意を求めた
「…………そうだな」
僕のタルトを見て
何か言いたそうにしながら
先輩は自分のショートケーキに
フォークを突き刺した
僕もウキウキしながら
フォークを左手に持ち
いそいそと
フルーツタルトを刺す
―――――カツンっ
…………………あれ?おかしいな
もう一度フォークを横にして
タルトに切れ目を入れようとした
―――――――カツンっ
タルトは切れ目が入るのを嫌がり
フォークを当てるたびに
皿の上で右へ左へと逃げる
これはもしや………
「妖怪のせい!?」
「お前のせいだ、バカ」
周防先輩が呆れたように
鋭く突っ込んだ
「利き手が使えないのに
そんな食べにくいもんを頼んで
どーすんだよ」
「だって……食べたかったから……」
先輩は『やれやれ』といった様子で
手を出した
「それは俺が食うから
他のに換えてもらえ」
「嫌です!」
僕は皿を腕で覆って死守した
「はぁ……勝手にしろ」
先輩は生クリームたっぷりの
ショートケーキの上の大きな苺に
フォークを刺して口へと放り込む
自分だけズルいっ!
「………なんだよ」
「別に」
僕の身体中にグツグツと煮えたぎる
真っ黒い感情………
通称『食い物の怨み』を装填し
先輩に向けて目から光線を放った
すると、
「……わかったよ、切ってやるから貸せ」
やった!
目は口ほどにものを言う作戦
大成功だ!
僕はサッと先輩に皿を差し出すと
餌を待つ子犬のように
じっと先輩の手元を見た
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