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伝心
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「…………は、はぁ?
意味わかんね……………」
耳元で早鐘のように打ち続ける脈音で
先輩の声が籠って聞こえた
「あー……あれだろ?
オムとかカレーとか……
ライスがライク的な話だろ?
それなら俺だって」
「僕の心や体が先輩のものになるなら
僕は喜んでオムライスになって
先輩に食べられますよ」
普段の僕からは
想像もできないようなセリフを
先輩に囁く
「はは、……さっきから……
………ホント、わかんないんですけど」
本当にわかっていないのか
それとも
わかっているのに誤魔化しているのか
「……いきなり僕にそんなことを言われて
先輩が信じられないのは当然です」
『愛とは語るものではなく
………感じるものである』
誰かが
そんなことを言っていたけれど
他人には敏感で
自分には鈍感なこの人には
まったく当てはまらない
一、二歩先を歩いて
人を待ち構えているのに
自分の気持ちは
三歩も四歩も後ろに
置き去りにするような
この愛すべき愚かな人に
どうか少しでもいいから
想いが伝わりますようにと
願いを込めて
口を開いた
「でも、僕はあなたが誰よりも好きだし
そばにいたいし、離れたくない
あなたを独占して愛して
あなただけに…………
………愛されたい……」
「はは……な、なにそれ………
お前、曲のライターかよ
西カナみてぇになっちゃってるよ?」
先輩は
声を震わせながら言った
「僕の気持ちを受け入れろなんて
図々しいことは言いません
そのかわり
ちゃんと僕の目を見て
さっきと同じことを言って下さい
そしたら………
…………諦めますから」
少し強めに言うと
先輩はようやく振り返り
「……………………」
僕の目を見つめた
「俺は…………」
僕も先輩の目を見つめる
「………お前が………嫌いだ」
「………………ウソつき」
「はぁ?嘘じゃねぇし」
「じゃあ、それは何ですか?」
僕が指差す先に
先輩はゆっくり手を持っていく
指先にあるものが触れると
先輩は僕に見られないように
また顔を背けた
「………………………」
先輩は項垂れて片手で顔を隠し
肩を震わせる
いつもたくましくて
僕をすっぽりと隠してしまう
その体を小さくして
周防恭介は
泣いていた
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