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心を融かす無償の愛は【side/周防 恭介】
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「せんぱ…」
「うるさいっ!黙れっ!見んなっ!」
コイツほんと
マジでムカつく………
俺がどんな想いで
お前を手放そうとしたか
知りもしないくせに
俺のことなんか
何も知らないくせに
こんな俺を
好きだと言う椎名が
どうしようもなく
眩しくて綺麗すぎて
残酷すぎて
「………そんなこと言われたって……
……………っかんねーよ……」
本当にどうしたらいいのか
何もわからなくなってしまった
嬉しいのか
悲しいのか
自分がどうしたいのかすら
もうわからない
―――そんな俺の肩に
椎名の細くて白い手が触れて
自分の胸の中へと
優しく抱き寄せた
ギュッと抱きしめられた拍子に
また俺の目から涙が溢れる
「先輩が何に苦しんでるのか
僕にはわかりません」
胸から聞こえる声を
嗚咽を堪えながら聞いた
「でも、僕は……」
「そんな先輩が
どうしようもなく愛おしいです……」
―――こんな風に
無条件に愛されてしまったら
俺に打つ術は
もう何もない
さっきまで
苦しみもがいていた自分が
椎名の言葉で
切り離されて光に溶けていき
押さえきれない椎名への愛が
破壊と再生を繰り返しながら
俺の中の闇を吸収して
どんどん大きくなっていく………
メビウスの輪のように
永久に続く贖罪の道に
突如と咲いた一輪の花は
俺に踏みつけられても
燃やされても
枯れることなく健気に
ユラユラと風に揺れて
優しいリズムを
俺に叩き込んでいく
それでも俺はまた
愛の重圧に耐えられずに
逃げてしまうかもしれない
手にとって壊すくらいなら
手の届かない場所で
存在してくれていたほうがマシだ
………今でも
その気持ちは変わらない
けれど…………―――
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