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腹黒な僕
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真柴先輩は恭先輩の影から
スッと顔を出して僕を見た
恭先輩も『あ―…』と言いながら僕を見る
何、僕………邪魔者ですか?
「コイツは……もう知ってると思うけど
……………一年の、椎名春馬
………俺の…………その」
「ただのでかいストラップです」
僕は先輩の言葉を遮り
満面の笑みで挨拶をすると
恭先輩がキッと睨んだ
「………は、
文句ばっかし言うストラップとか
マジで可愛くね………い―――ったぁっ!」
表情を崩さずに恭先輩の足を踏みつけると
真顔だった真柴先輩が
吹き出すように笑った
「大変だったみたいだね」
「いえ…………」
大変だったみたいだね、の一言で
今までのことを片付けられてしまった僕は
悔しくて
宙ぶらりになっていた右手を
ギリギリッと力一杯、握りしめた
「あ……そう…いえば……」
恭先輩は悶絶しながら呟くと
ブレザーの内ポケットから
ハートの模様が入った
可愛らしい便箋を取り出した
………浮気どころか
二股かけるつもり?
「尾野っちが……お前にって……」
「尾野さんが?」
また知らない名前が出てきて
僕は疎外感に襲われた
真柴先輩は恭先輩から便箋を受け取ると
中に入っているものを取り出す
見てはいけないような気がして
僕は床と睨めっこすることにした
「映画のプレチケ?」
「ちょっと観たくてな…
尾野さんに頼んでたんだ」
「2枚入ってる!まぁさーかぁ……?」
「……俺が頼んだのは一枚だよ」
「なぁんだ……つか、俺に言えばいいのに」
「お前は忙しすぎる」
「俺のフットワークの軽さをナメんなよ?
お前のためなら
地球の裏側まで行ってやるって」
――――――――――――――
―――僕の知らない恭先輩
この二人はきっと
普段からこんな風に
仲がいいんだろうな………
二人が数万回と繰り返した会話と
数百万分と過ごしてきた時間を想像して
腸煮えくり返るくらい
ムカついた
―――――なに人のものに
気安く話かけてんの?
恭先輩は
もうアンタのものじゃないんだよ
話したければ僕に許可を取れ
もちろん承認なんてしないけど
つか、
いつまでヘラヘラふらふら
キャンキャン吠えてんだ、バカ犬が
そのフットワークの軽さってやつを
僕のために今発揮しろよ
「………椎名くんは、映画とか興味ある?」
突然、真柴先輩に話しかけられて
心の中で毒づいていた僕は
焦りながら顔を上げた
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