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天変地異【side/真柴和臣】
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恭介が彼に対して口を開きかけた時
恭介の胸ポケットから着信音が鳴った
「チッ…、んだよ…こんな時に……」
イライラしながら取り出すと
「悪の根源め……」
尾野さんか………
―――このチケットの行く末を
聞くための電話だとすぐにわかった
遠くにいながらでもタイミングを見計れる
有能なマネージャーは
俺の頼みを深読みし
チケットを恭介の分と2枚用意して
さらに
『おまけ』もつけた
俺の気持ちを
わかったようなその行動の裏には
たぶん…………――――
「出ないのか?」
「…………悪い、ちょっと待ってて」
恭介は彼に一緒にしゃがむように促すと
窓の下で座りながら話を始めた
「あの………」
恭介が会話に集中していることを
確認した彼は
俺を見上げながらおずおずと
話しかけてきたので
俺も彼の隣にしゃがんだ
「その………変な態度を取ってしまって
…………いろいろ……すみませんでした」
………いろいろ
俺と映画に行く気がないのに
わざと思わせ振りな態度を取ったことの他に
何があるのかわからなかったが
俺は「大丈夫だ」とニコッと笑った
彼はホッとした顔をしてから
すぐにうつ向いて
長い睫毛を震わせながら質問してきた
「あの、真柴先輩は
小さい頃からきょ……
周防先輩といっしょだったんですよね」
「あぁ」
「その頃の先輩って、
どんな感じだったんですか?」
質問したあと
彼は顔を真っ赤に染めてうつ向いた
やきもちか………
容姿に負けないくらい
可愛らしい性格の彼だが
さっきの態度からすると
たぶん、
怒らせたら
倉敷より怖いのではないだろうか
「………椎名くんは
恭介と知り合って、どのくらい?」
「実際に会ったのは、
……………今朝が初めてです」
………驚いた
さっきまでの
恭介の態度を見れば
恭介がどれだけ彼を大切にしているか
よくわかる
俺に対して嫉妬に狂い
椎名春馬の発言行動に翻弄される
それは、俺が知り得ない
周防恭介の姿だった
出会って間もない人間を信用し
隙だらけの自分を見せるなんて
………考えられなかった
「小さい頃の恭介を知って
…………どうするんだ?」
「それは…………」
この子がどうやって
恭介の心の隙間に入れたのかはわからない
たが彼は、俺や倉敷が
数年かけてできなかったことを
たった数時間でやり遂げたのだ
もしかしたら
彼だったら
臆病な恭介をほの暗い闇の中から
救い出してくれるかもしれない
「昔の恭介を知っている俺が、羨ましいか」
彼は弾かれたように顔を上げると
「…………はい」
大きな目を伏せながら
悲しそうに笑った
「俺は……椎名くんが羨ましいよ」
「え?」
そう言うと
尾野さんと話し込んでいた恭介が
イライラしながらチラッとこちらを見た
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