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光となれ!【side/椎名 春馬】
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また二人きりになった放送室で
先輩はパソコンから
USBを抜き取った
画面いっぱいに展開された
おびただしい量の
ボイスデータ……………
僕の目から
焼き付いて離れなかった
いったいこの人は
どれ程の苦しみを
味わい続けてきたのか………
「こ、こんなの犯罪じゃないですか!
これだけ証拠があるのに
何で警察に…………」
僕はそこまで言って気がついた
「脅され……たんですか」
こんな酷いことを
平気でするような奴だ
『誰かに言えばお前以外の人間を』
そのフレーズさえあれば
先輩を拘束できる
「別に、酷いことばかりじゃなかったよ
中には体の相性が良かった奴もいたしな」
そう言って先輩は
USBを握りしめ
財布に直した
「俺のこと………嫌いになった?」
「そんなこと……
あるわけないじゃないですか」
先輩は悲しそうに優しく微笑んだ
「ま、俺や椎名に危害を加えたら
ネット上に拡散させるって脅したし
しばらくは大人しくしてるだろ」
―――先輩は
どんな気持ちで
いつもUSBを
持ち歩いていたんだろうか……
自分の忌まわしい記憶を
その小さな器に閉じ込めて
どのくらいの年月を
一人で
堪え忍んできたのだろうか……
「あー……なんつーか……
和臣と美緒には内緒な?」
先輩との初めての『秘密』の共有
誰にも知られたくなかった
隠したかった
もう一人の…………『周防恭介』
それを表に出させてしまったのは
傷口を抉ってしまったのは
他の誰でもない
この僕だ………
「なんか頭使ったから甘いもの食べたい
椎名、かき氷食いに行こ………
……………椎名?」
僕は先輩に抱きついて
背中に顔を埋めた
「………………」
何も言えず
抱きしめることしかできない自分が
とても歯痒かった
先輩は前に回した僕の手に
そっと自分の手を重ねた
「……上手く言えねーけど………
俺は…お前がいれば
それだけで幸せだから………」
―――こんな時でも
先輩は惜しみ無く
僕に愛をくれる
恭先輩…………
貴方が夜道に迷うなら
僕は貴方を照らす
優しい月の光になりたい………
寒さで凍えた貴方を
太陽の光となって暖めたい………
「先輩……さっきの
もう一度、言ってもらえますか?」
先輩は僕の言葉の意味を理解し
僕の方を向いた
「椎名………
こんな俺だけど
付き合っていただけますか?」
「はい………
こちらこそ
よろしくお願いいたします」
この先
もしかしたら
これ以上の苦難が
僕らを待ち構えているかもしれない
けれど
僕たちならきっと
乗り越えていける
行けるよね……恭先輩………
――――こうして僕たちは
いろんな想いを抱え合いながら
恋人同士になった
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